築30年の家と“これからの暮らし”|50代・60代・70代のための住まいの備え方

築30年の家と“これからの暮らし”|50代・60代・70代のための住まいの備え方

新築当時30代だったご夫婦も、気がつけば60代。築30年を迎えた住まいは、見た目がきれいでも、設備や構造の内部では少しずつ“年齢相応の変化”が進んでいます。

そして、その少し先には、じきに60代を迎える50代世帯、すでに様々な不便に直面している70代世帯がいます。誰にとっても「今の家で、この先どう暮らしていくか」を考え始めるタイミングです。

このコラムでは、築30年の家を舞台に、緊急で対応すべきこと計画的に備えるべきことを分けて整理しながら、50代・60代・70代それぞれの世代に合った住まいの考え方をお伝えします。

第1章|「築30年」という節目が持つ本当の意味

1-1. 新築時30代だった世代が今、直面する現実

築30年ということは、家を建てたとき30代だったご夫婦は、今や60代。子どもたちは独立して住まいを出て行き、ご夫婦2人、あるいはどちらかお一人で暮らしている方も少なくありません。

当時は「子育て世代が暮らしやすい家」をイメージして間取りや設備を選ばれたはずです。広いリビング、段差のある和室、2階に子ども部屋…。あの頃の“ベストな家”が、そのまま今の暮らしにぴったり合っているかと言うと、実はそうとは限りません。

年齢とともに体力・視力・筋力は自然と変化します。階段の上り下り、浴室のまたぎ、夜間のトイレの移動。若い頃には何でもなかった動作が、60代・70代になると「少し不安」「できればあまりしたくない」と感じるようになっていきます。

1-2. 住宅の寿命と人生のステージは連動している

住まいにも“ライフサイクル”があります。屋根・外壁・給湯器・水まわり・内装…。それぞれの設備にはおおよその寿命があり、10〜20年ごとにメンテナンスが必要です。

築30年というのは、まさに「一通りの設備が一巡し、二周目・三周目に入っていく入口」の時期。人生で言えば、子育てから自分たちの健康・これからの暮らし方を見つめ直す“セカンドステージ”に近いタイミングです。

つまり、家の節目と人生の節目が、ちょうど重なっているのが築30年なのです。

1-3. 「壊れる家」と「備えられる家」の分かれ道

築30年の家には、大きく分けて2つのパターンがあります。

  • 不具合に気づきながらも、そのまま使い続けて「壊れてから対応する家」
  • 小さな変化のうちに気づき、早めに点検・予防をして「備えながら暮らす家」

どちらが正解というわけではありませんが、後者のほうが「選択肢の多さ」「費用の計画」「心の余裕」という意味で、大きな差が生まれます。

特に、冬場の給湯器や水まわりのトラブルは、気づいたタイミングが「すでに手遅れに近い」場合が多いのも実情です。だからこそ、築30年は、「まだ動いているけれど、この先も安心して使えるか」を考え始めるサインだと捉えることが大切です。

1-4. 50代・60代・70代で考えるべき住まいの視点の違い

同じ築30年の家でも、住んでいる方の年代によって、見るべきポイントは変わります。

  • 50代:「親の家」「自分の家」どちらも視野に入れて、これから10〜20年の計画を立てる時期
  • 60代:今の家で“あと何年”“どんな暮らし方をしたいか”を具体的に考え始める時期
  • 70代:すでに「ちょっと不便」「少し怖い」と感じる場面が増え始め、早めの安全対策が重要になる時期

このコラムでは、これら3つの世代を意識しながら、「緊急なこと」と「計画的に備えること」を分けて、分かりやすく整理していきます。

1-5. 築30年は“老後の準備段階”のスタートライン

老後の準備と言うと、「まだ先のこと」と感じるかもしれません。しかし、設備の更新や間取りの見直しは、一度にすべて行う必要はなく、むしろ少しずつ、段階的に整えていく方が負担も少なく、満足度も高くなります

築30年は、「これから20年をどう暮らすか」のスタートライン。今まで頑張ってきた家に、これからも安心して住み続けるために、いま一度向き合ってみる価値があります。

第2章|家族の帰省で見えてくる“住まいの本音”

2-1. 子ども世代のひと言で気づく住宅の変化

年末年始やお盆など、子ども世代や孫が帰省したときに、こんな言葉を言われたことはありませんか?

  • 「お風呂、前より寒くない?」
  • 「この家、けっこう段差多いね」
  • 「換気扇の音、かなり大きいけど大丈夫?」
  • 「お湯が出るまで、結構時間がかかるね」

住んでいる本人からすると「昔からこうだし」「そんなものだよ」と思っていることでも、他の家に住んでいる家族から見ると、違和感としてはっきり見えることがあります。

この「外からの視点」は、築30年の家が自分では気づきにくくなっている変化に気づかせてくれる、とても大切なきっかけです。

2-2. 親世代が慣れてしまった不便

60代・70代になると、「不便だけど、なんとかなるから大丈夫」と、つい我慢するクセがついてしまうことがあります。

たとえば、

  • 冬の浴室の冷え込み
  • 古くなった給湯器の不安定なお湯の出
  • 暗い階段・廊下
  • 深くかがまないと届かない低い収納

どれも「すぐに命に関わるものではない」かもしれません。しかし、小さな不便の積み重ねは、暮らしの満足度や安全性を確実に下げていきます

2-3. 50代世帯が見過ごしやすい違和感

50代は仕事も家庭も忙しく、「じっくり家のことを考える余裕がない」という方がほとんどです。その一方で、親の家も自分の家も、どちらも築年数が進み、設備や構造の疲れが表に出始めています。

この世代が見過ごしやすいのは、

  • 「何となく不便」だけど、「すぐ困るわけではない」状態
  • 「そのうちやろう」と思いながら、後回しになっている状態

しかし、不便に慣れてしまう前に気づけた人ほど、ゆとりをもって準備や対策を進めることができます。

2-4. 60代が直面し始める体の変化と住まいの不一致

60代になると、多くの方が「体力の変化」を感じ始めます。

  • 階段の上り下りが少しつらくなる
  • 浴槽のまたぎが高く感じる
  • 夜中のトイレの移動が不安になる

築30年の家は、当時の生活スタイルや体力に合わせて作られています。そのため、今の体の状態や暮らし方と、家のつくりにギャップが生まれやすくなります。

このギャップに早めに気づき、「どこを整えれば、今とこれからが安心になるか」を考えることが、60代の住まいづくりの重要なテーマです。

2-5. 70代が抱える「不安」と「本音」

70代になると、「もしここで転んだら…」「もしここでお湯が出なくなったら…」といった“不安”が、より現実味を帯びてきます。

しかし一方で、

  • もう大きな工事はしたくない
  • 今さらお金をたくさんかけたくない
  • 工事中の生活が大変そうで不安

という本音もあります。

だからこそ、70代にとって大切なのは、「全部を直そう」とするのではなく、「本当に必要なところだけを、無理なく整える」発想です。そのためには、緊急性の高いところと、計画的に考えるところを整理することから始めるのがおすすめです。

第3章|緊急性が高い住宅トラブルとは(築30年住宅編)

3-1. 緊急性の高いトラブルの特徴

まず最初に整理しておきたいのは、「今すぐ対応しないと生活に大きな支障が出るもの」です。これらは“緊急対応”のゾーンに入ります。

  • お湯が出ない、あるいは出たり出なかったりする
  • ガス機器の点火不良や異臭
  • トイレが頻繁につまる、水が止まらない
  • 洗面所や浴室で水漏れが続いている
  • ブレーカーがよく落ちる、焦げたようなにおいがする

これらは、「様子を見る」ではなく「できるだけ早く専門家に状況を見てもらうべき」サインです。

3-2. 気づいたときに待ったなしになる危険サイン

特に築30年を過ぎると、給湯器・ガス機器・水まわり配管など、目に見えない部分での劣化が進んでいます。

例えば、

  • 給湯器からの大きな異音や、黒い煙
  • お湯の温度が急に上がったり下がったりする
  • 配管まわりの湿り気やカビ

こうした症状が出た場合、「様子を見よう」としているうちに、ある日突然まったく使えなくなることも珍しくありません。

3-3. 冬場に起きやすい住宅設備トラブル

冬場は設備トラブルが表面化しやすい季節です。気温の低下により機器への負担が増え、給湯器や配管の弱っている部分が一気に“限界”を迎えてしまうことがあります。

特に、「年末年始の家族が集まっているタイミング」でトラブルが起きると、心理的な負担も大きくなります。「早く直したいのに、すぐに動ける業者が限られてしまう」状況に陥ることもあり得ます。

3-4. 70代世帯が特に注意すべき緊急サイン

70代の方にとって、設備トラブルは単なる「不便」ではなく、生活の安全に直結します。

  • お湯が出ない → 体を十分に温められない
  • トイレの水が流れない → 外出先に頼らざるを得ない
  • 急な電気トラブル → 暗い室内で転倒リスクが高まる

「なんとかなるから大丈夫」と無理をするのではなく、異変を感じたら早めに相談することがご自身を守ることにつながります。

3-5. 60代が油断しやすい「まだ大丈夫」という思い込み

60代は「まだ若い」「自分で何とかできる」という感覚が強く、ついトラブルを先送りにしてしまいがちです。しかし、築30年の家に起きるトラブルは、「ちょっとした不便」の裏に、「構造や設備の深い部分での劣化」が隠れていることもあります。

特に、「音」「におい」「水の流れの変化」は、緊急ゾーンの一歩手前であることも多いため、早めの確認と予防を心がけることが大切です。

第4章|すぐに確認すべき緊急チェックリスト

4-1. 給湯器の緊急サイン(築30年編)

次のような症状がある場合は、できるだけ早く点検を検討してください。

  • お湯の温度が安定しない(熱くなったりぬるくなったりする)
  • 運転音が以前より大きくなった気がする
  • 本体まわりにサビや変色が見られる
  • 使用年数が10年以上経過しているのに、一度も点検をしていない

4-2. キッチン設備の危険兆候

キッチンまわりでは、次のような変化があれば要注意です。

  • ガスコンロの火がオレンジ色っぽい/安定しない
  • 点火までに時間がかかることが増えた
  • レンジフードの吸い込みが弱く、においが残りやすい

4-3. 浴室・洗面所で起こりやすいトラブル

浴室や洗面所は、湿気がこもりやすく劣化が見えにくい場所です。

  • 床がふわふわする場所がある
  • 壁や天井のカビが取れにくくなってきた
  • 排水口からのにおいが強くなってきた

4-4. トイレの異変と詰まりの前兆

トイレは毎日使う場所だからこそ、少しの変化に早く気づくことが大切です。

  • 流した後の水の減り方が以前と違う
  • 流すたびにゴボゴボという音がする
  • 水が流れきらず、何度もレバーを操作してしまう

4-5. 電気・ガス・水道のトラブル兆候

電気・ガス・水道のトラブルは、安全面も含めて慎重に扱う必要があります。

  • ブレーカーがよく落ちる
  • コンセントまわりが熱を持っている/変色している
  • ガスのにおいを感じることがある
  • 水道メーターが使っていないのに回っている気がする

少しでも「おかしいな」と感じたら、「様子を見る」ではなく「まずは相談」すること。それが、大きなトラブルを未然に防ぐ一番の近道です。

まずは「気づくこと」から。ご相談だけでも大歓迎です。

築30年を迎えた住まいは、「まだ使える」からこそ、変化に気づきにくいものです。家族の帰省で少しでも気になる点があった方は、それが大きなトラブルを防ぐための“最初の一歩”かもしれません。

当社では、いきなり工事をすすめることはありません。まずは、

  • 今の設備や水まわりの状態を一緒に確認する
  • 「緊急で対応したほうがよいこと」と「時間をかけて考えればよいこと」を整理する
  • 50代・60代・70代、それぞれの暮らし方に合った優先順位を一緒に考える

といった“予防と準備”のサポートを行っています。

「まだ工事をするかどうか分からない」「相談だけでもいいのかな?」という方ほど、お役に立てることがたくさんあります。どうぞお気軽にお声がけください。

第5章|緊急トラブルが暮らしに与えるリアルな影響

5-1. お湯が使えない生活がもたらす不便

「お湯が出ない」というトラブルは、実際に経験してみると想像以上の負担になります。顔や手を洗うとき、冷たい水だけで済ませるのは冬場には相当つらいものがありますし、食器洗いも油汚れが落ちにくくなり、家事の時間と手間が一気に増えます。何より困るのは、入浴です。シャワーでさっと汗を流すこともできず、体を温めることが難しくなると、冷えからくる不調や、持病がある方にとっては体調悪化のきっかけにもなりかねません。「今日はお風呂を我慢すればいい」という話ではなく、「明日も明後日もどうしよう」という不安が頭から離れなくなります。

築30年の家では、給湯器自体が10年以上前の機種であることも多く、壊れたタイミングによっては同等品がもう製造されていないケースもあります。そうなると、慌てて別の機種を選ばざるを得なくなり、「本当はもっと比較して選びたかった」という後悔につながることも少なくありません。お湯が出ない生活は、身体的な負担だけでなく、心理的なストレスと判断のプレッシャーを同時に抱える状態といえます。

5-2. トイレトラブルが与える精神的ストレス

トイレのトラブルは、生活の中での優先度が非常に高い問題です。詰まりや水漏れが起きると、「次に使うときは大丈夫だろうか」と毎回不安になりますし、来客がある日や家族が帰省しているタイミングで起こると、恥ずかしさや焦りも加わります。特に70代の方にとって、夜間にトイレが使えない状況は、別の場所を探さなければならず、転倒リスクや体調への負担も増します。「万が一また詰まったらどうしよう」と心配しながら過ごすのは、想像以上に精神的エネルギーを消耗します。

また、「トイレが不安だから外出を控える」「人を呼ぶのを遠慮してしまう」といった形で、行動範囲や人付き合いにも影響してきます。こうなってしまうと、単なる設備の故障ではなく、暮らしの楽しさそのものを削ってしまう結果になりかねません。築30年を超えたトイレ設備は、機能的にはまだ動いていても、内部部品の摩耗や配管の劣化が進んでいることも多いため、「なんとなく流れが悪い」「においが残りやすい」といった小さなサインのうちに、一度点検を検討することが、心の安心にもつながります。

5-3. 冬場の設備不良と体調への影響

冬場の設備トラブルは、体調への影響が大きくなります。特に浴室や脱衣所が寒い状態で、さらに給湯器の不調でお湯の温度が安定しないとなると、「今日はお風呂をやめておこう」と入浴を控えてしまう方も少なくありません。しかし、体を温めない日が続くと、血行不良や肩こり、冷え性の悪化などにつながり、持病のある方にとっては症状の悪化を招く可能性もあります。逆に、寒い浴室で急いで熱いお湯を浴びるような入浴は、血圧の急な変化を引き起こしやすく、高齢の方には危険なパターンでもあります。

また、暖房器具の不調や電気系統のトラブルで、十分な暖房が使えない状態になると、室内であっても寒さを我慢しなければならず、風邪やインフルエンザなどの感染症への抵抗力も下がりやすくなります。築30年の家では、断熱性能が今の新築住宅ほど高くない場合も多く、設備トラブルが起きたときの影響が大きく出やすいのが現実です。「寒いけれど何とかなる」と我慢を重ねるのではなく、「寒さを我慢せずに過ごせること」を当たり前として考える視点が大切です。

5-4. 「突然の出費」がもたらす不安

給湯器、トイレ、キッチン設備、配管…。これらが突然壊れてしまったときに困るのが、「想定していなかった出費」です。たとえば、給湯器の交換で30万〜40万円、トイレの交換で10万〜20万円、配管の補修が入るとさらにプラス、ということも珍しくありません。こうした金額を、事前の心構えもなく一度に支払うのは、多くのご家庭にとって大きな負担です。「本当はもう少し検討したかった」「他の見積もりも見てみたかった」という気持ちを抱えたまま、時間のない中で決断しなければならない状況は、精神的なストレスにもなります。

また、「今回の出費で、ほかに必要だったことを我慢しなければならなくなった」と感じると、住まいのトラブルそのものよりも、「お金を使ってしまった」という後悔が長く心に残ることもあります。だからこそ、本来は「壊れる前にある程度の予測を立てておく」ことが重要なのですが、日々の暮らしの中でそこまで意識を向けるのは簡単ではありません。築30年という節目に、「この先、どのあたりで何に費用がかかりそうか」をざっくりでも把握しておくことは、家計の安心にもつながります。

5-5. 家族関係に影響を与えるトラブル

設備トラブルは、直接的には「モノ」の問題ですが、実は家族関係にも影響を与えることがあります。たとえば、帰省した子ども世代が「お風呂が寒くてびっくりした」「トイレの流れが不安だった」と感じているのに、親世代は「大げさだよ」「昔からこんなものだ」と受け止めてしまうと、少しずつ意見のすれ違いが積み重なっていきます。「親の家のことに口出ししにくい」「心配だけど何も言えない」と感じる子ども世代も多いものです。

逆に、親世代のほうでも、「心配をかけたくない」「お金の話をしたくない」という気持ちが働き、実際には困っていることをなかなか言い出せないこともあります。そこへ突然のトラブルが起きると、「あのとき話しておけばよかった」「相談しておけば違ったかもしれない」という後悔が、家族それぞれの胸に残ってしまいます。設備トラブルそのものは修理や交換で解決できますが、気持ちのすれ違いは、時間を戻してやり直すことができません。だからこそ、「まだ大丈夫」と我慢する前に、「少し気になることがある」と家族で共有しておくことが大切です。

第6章|計画的リフォームという考え方

6-1. 壊れる前に考える人が増えている理由

最近は、「壊れてから慌てて直す」のではなく、「壊れる前に備えておきたい」と考える方が増えています。その背景には、突然のトラブルによる生活の混乱や予想外の出費を、身近な人の経験やニュースなどを通じて知る機会が増えたことがあります。また、インターネットで情報が得やすくなったことで、「設備には寿命がある」「事前に考えておくという選択肢がある」という意識が広まっているのも一因です。

築30年の家にお住まいの方の中には、「親の家のトラブルを見てきたから、同じことにならないようにしたい」と考える50代・60代の方も多くいらっしゃいます。早めに状況を把握し、「今すぐやるべきこと」と「数年かけて整えればよいこと」を分けておくことで、心の余裕も、家計の計画もぐっと立てやすくなります。計画的なリフォームとは、単に工事の順番を考えることではなく、「暮らし方とお金の使い方を、自分たちのペースで選べる状態」にしておくことだと言えます。

6-2. 住宅設備の寿命を知るという安心

給湯器はおおむね10〜15年、ガスコンロは約10年、レンジフードやトイレ、洗面化粧台は15〜20年、ユニットバスやシステムキッチンは20〜25年といった具合に、住宅設備にはそれぞれ“寿命の目安”があります。もちろん、使い方や設置環境によって前後はしますが、「永遠には使えない」ということを前提に考えておくことが大切です。

寿命を知ることは、「壊れるから不安」というネガティブな感覚ではなく、「だいたいこの時期に見直せばいい」という目安を持てる、前向きな行動のきっかけになります。たとえば、「今はまだ使えるけれど、次のボーナスのタイミングで交換を検討しよう」「子どもが独立した後にまとめて水まわりを見直そう」といった形で、自分たちのライフプランに合わせた準備ができるようになります。

6-3. 10年単位で考える住まい管理

住まい全体を一度に完璧にしようとすると、費用も時間も大きな負担になってしまいます。そこでおすすめなのが、「10年単位で住まいを見直す」という考え方です。築10〜20年のタイミングで一度、築20〜30年のタイミングで一度、そして築30年以降は、設備の状態を見ながら優先度が高いところから整えていくイメージです。

たとえば、「まずは給湯器とコンロ」「次の段階で浴室と洗面」「その次にキッチンや窓まわり」といったように、数年おきにポイントを絞って手を入れていくことで、一度に大きな負担をかけずに住まいの状態を保つことができます。これは、50代の方が「60代・70代を見据えて」考える時にも、60代の方が「70代を快適に過ごすため」に考える時にも、共通して役に立つ視点です。

6-4. 大規模工事を避けるための小さな準備

大規模なリフォームは、費用だけでなく工期も長くなり、生活への影響も大きくなります。もちろん、必要に応じて大きな工事を行うことも大切ですが、「気づいたらあちこち悪くなっていて、一度に大工事をせざるを得なくなった」という状況は、できれば避けたいところです。そのために有効なのが、「小さな準備をこまめに積み重ねる」という発想です。

たとえば、給湯器を新しいものに替えるタイミングで、将来の浴室リフォームも見据えて追い焚き機能対応の機種を選んでおく、コンロやレンジフードを交換するタイミングで、掃除のしやすさや省エネ性も考慮しておくなどです。こうした“小さな一歩”が、結果的に大きな工事を先延ばししたり、内容をシンプルにしたりすることにつながります。

6-5. 計画的に進める人の共通点

計画的に住まいを整えているご家庭には、いくつかの共通点があります。ひとつは、「完璧を目指して一度にやろうとしない」こと。もうひとつは、「困っていないうちから、少しずつ情報を集めている」ことです。気になることがあったときにメモしておいたり、家族で「次に直すとしたらどこかな?」と話題にしたりするだけでも、いざというときの判断がスムーズになります。

また、「相談しやすい業者をあらかじめ見つけておく」ことも大きなポイントです。いきなり工事の話をするのではなく、「今の家の状態を一度見てもらって、緊急と将来のポイントを整理したい」と相談しておくことで、安心して長期的な計画を立てられるパートナーを持つことができます。

第7章|築30年住宅に必要な“予防型”チェックポイント

7-1. 給湯設備の老朽化

給湯設備は、毎日当たり前のように使っていますが、その役割は非常に大きいものです。築30年の家では、すでに一度交換しているケースもあれば、新築時から20年以上使い続けているケースもあります。見た目がきれいでも、内部の部品は経年によって少しずつ摩耗し、限界に近づいていることがあります。

「お湯の出が遅くなってきた」「温度が一定でない」「運転音が大きくなった」といった変化は、老朽化のサインのひとつです。完全に壊れてしまう前に、使用年数とあわせて一度専門家にチェックしてもらうことで、突然の故障や真冬のトラブルを防ぐことにつながります。

7-2. 配管の劣化

配管は、床下や壁の中など見えない場所を通っているため、普段はほとんど意識されません。しかし、水道管や排水管の劣化は、長い時間をかけて静かに進行します。築30年ともなると、配管材の種類によっては錆びやすいものや、継ぎ目の劣化が起きやすいものもあり、見えないところでトラブルの準備が進んでいることもあります。

「最近、床下からかすかに湿った感じがする」「特定の場所だけにカビが広がりやすい」といった症状がある場合は、配管からのにじみや水漏れが原因の可能性もあります。大きな漏水になる前に、点検や部分的な更新を行うことで、床や構造材へのダメージを防ぐことができます。

7-3. 水まわりの床・壁

浴室・洗面・トイレなどの水まわりは、どうしても湿気がたまりやすい場所です。床や壁の表面は一見問題ないように見えても、内部では下地の木材やボードがじわじわと傷んでいることがあります。築30年の家で、「床が少しふわっとする」「クッションフロアの一部が沈む感じがする」という場合、単なる表面の傷みではなく、下地材の劣化が進んでいるサインであることも少なくありません。

また、同じ場所に何度もカビが生える、クロスが浮いてくる、といった現象も、内部に湿気がこもっている可能性を示しています。放置すると、見た目の問題だけでなく、悪臭や構造材の腐食、シロアリ被害などにつながることもあるため、「少し変だな」と感じた段階で、一度点検を検討することをおすすめします。

7-4. 屋根・外壁

屋根や外壁は、雨風や日射から家全体を守る盾のような存在です。築30年の家では、一度もメンテナンスをしていない場合、塗装の劣化やひび割れ、コーキングの痩せなどが進んでいることがあります。これらは、すぐに雨漏りにつながるとは限りませんが、放置する期間が長いほど、内部への水の侵入リスクが高くなります。

屋根裏にシミがある、外壁に手で触れると白い粉がつく(チョーキング)、外壁の継ぎ目のゴムのような部分が割れている、といった症状は、メンテナンスのタイミングを知らせるサインです。外回りのメンテナンスは費用もかかりますが、早めに対応することで、「外壁材や下地まで傷んでしまい、大規模な補修が必要になる」という事態を避けやすくなります。

7-5. 断熱・サッシ

築30年の家は、建てられた当時の断熱基準でつくられているため、今の新築住宅と比べると断熱性能が劣ることが少なくありません。冬場に窓ガラスが結露しやすかったり、窓際だけ極端に冷えたりするのは、サッシやガラスの性能が原因になっている場合もあります。「暖房をつけても足元が冷える」「部屋ごとの温度差が大きい」といった悩みは、断熱とサッシの見直しで改善できることも多くあります。

また、古いサッシでは、戸車の劣化や建付けのゆがみにより、開け閉めが重くなっていることもあります。これは転倒リスクやストレスにつながるだけでなく、すき間風や防犯性の低下にもつながります。すべてを一度に交換する必要はありませんが、よく使う場所や寒さが気になる場所から、少しずつ改善していくことで、住まい全体の快適性が大きく変わってきます。

第8章|生涯使用回数で考える住まいのメンテナンス

8-1. 設備は一生使えないことを知る

「せっかくお金をかけて工事をするなら、一生ものにしたい」──そう思うのは自然なことです。しかし現実には、ほとんどの住宅設備は「一生もの」ではありません。給湯器やコンロ、水栓、トイレ、浴室、キッチンなど、それぞれに寿命があり、一定の期間ごとに交換や大きなメンテナンスが必要になります。

この事実を知っておくことは、「結局何度もお金がかかるのか」という不安ではなく、「あらかじめ交換のタイミングをイメージしておける」という安心につながります。たとえば、「給湯器は10〜15年で数回、浴室は20〜25年で2〜3回、トイレや洗面は15〜20年で数回」といった目安を持つことで、「今回はここを整えて、次はこのタイミングで別の場所を見直そう」と、長いスパンで考えられるようになります。

8-2. 50代が意識したい交換タイミング

50代の方にとって大切なのは、「今の家をこれから20年どうしていくか」という視点です。築30年前後であれば、すでに一度は水まわりや外装のメンテナンスをしてきているかもしれませんし、これから初めて本格的に見直すという方もいるかもしれません。いずれにせよ、「あと何回、どの設備を交換する可能性があるのか」をざっくり把握しておくことで、家計とライフプランの両方を考えやすくなります。

たとえば、「60代前半までに給湯器とコンロを新しくしておく」「70代までに浴室とトイレの安全性を高める」といった、大まかなロードマップを持つイメージです。すべてを細かく決める必要はありませんが、「どの年代で何をしておくと安心か」を意識しておくことで、突然のトラブルにも慌てずに対応しやすくなります。

8-3. 60代にとっての優先順位

60代は、「これからの暮らし方」と「体の変化」の両方を意識しながら住まいを考える時期です。優先順位としては、まず「安全に関わる部分」が第一です。たとえば、浴室の段差や床の滑りやすさ、出入り口の段差、階段の手すりの有無などです。その次に、「日々の負担を減らす部分」、つまり掃除や家事のしやすさ、動線のスムーズさなどが挙げられます。

築30年の家では、設備更新と同時に「使い勝手」を見直すことで、暮らしの質が大きく変わります。たとえば、コンロを最新の安全機能付きに変えることで、火の不始末への不安が減ったり、掃除がしやすいレンジフードにすることで、日々の家事のストレスが軽くなったりします。「我慢していたことを減らしていく」という視点で、優先順位を整理していくと良いでしょう。

8-4. 70代が備えるべきポイント

70代になると、「大がかりな工事はもう控えたい」と感じる方も多くなります。その一方で、「今のままでは少し危ない」「毎日の動作がつらい」といった本音も出てきます。この年代で大切なのは、「無理をしないための備え」です。たとえば、浴室やトイレ、寝室からトイレまでの動線など、毎日必ず通る場所の安全性を高めることは、転倒やケガを防ぐうえで非常に重要です。

また、「もし設備が壊れたとき、誰に相談するか」を決めておくことも、大きな安心材料になります。連絡先を冷蔵庫や電話の近くにメモして貼っておくだけでも、「いざというときにどうしよう」という不安を減らすことができます。70代以降は、「大きく変える」というより、「必要なところをピンポイントで整える」イメージで考えていくと、心身ともに無理のない住まい方が実現しやすくなります。

8-5. 長く使える設備選び

設備を選ぶとき、「できるだけ安く済ませたい」という気持ちは自然なものです。しかし、築30年の家でこれから交換する設備は、「おそらく人生の中であと数回しか交換しないもの」でもあります。その意味では、「安さだけで選ぶ」のではなく、「長く使ってもストレスにならないか」「掃除やメンテナンスが自分たちの力で続けられるか」といった視点も大切です。

たとえば、毎日使うコンロや水栓は、ワンランク上の掃除しやすいタイプを選ぶことで、「毎日の小さなストレス」を減らすことができます。浴室やキッチンなどの大きな設備も、多少初期費用がかかっても、「長く使っても飽きないデザイン」「お手入れがしやすい素材」を選ぶことで、結果的に交換頻度を減らし、満足度の高い暮らしにつながります。「高いものがいい」のではなく、「自分たちの暮らしにとって、長く付き合えるかどうか」を基準に考えるのがポイントです。

第9章|失敗事例から学ぶ住まいの判断

9-1. 急いで決めてしまった後悔

緊急のトラブルが起きたとき、多くの方が「とにかく早く直してほしい」という気持ちになります。お湯が出ない、トイレが使えない、ガスが不安定といった状況では、冷静に情報を集めたり、複数の選択肢を比較する余裕がなくなってしまいます。その結果、たまたま最初に電話がつながった業者にそのまま依頼し、「価格の妥当性が分からないまま工事をお願いしてしまった」「本当は別の機器も選べたと後から知った」という後悔が残るケースは少なくありません。

また、時間に追われている状態では、「本当に必要な工事」と「念のためにと言われた追加工事」の区別がつきにくくなります。その場の説明を聞いているつもりでも、不安な気持ちの方が強くて、言われるままに契約してしまうこともあります。後日、冷静になってから見積書を見直し、「もう少し考えてから決めればよかった」「家族にも相談しておけばよかった」と感じる方も多いものです。こうした後悔を防ぐためにも、平時のうちに「相談できる先」を持っておくことがとても大切です。

9-2. 想定外の出費に戸惑った事例

築30年を過ぎた住まいでは、「まさかこんなにかかるとは思わなかった」という出費が発生することがあります。給湯器の交換だけのつもりが、配管の腐食が見つかって追加工事が必要になったり、トイレの交換の際に床の傷みが見つかり、下地の補修も行うことになったりするケースです。見積もりが当初の想定より大幅に増え、「このタイミングでここまでの出費は…」と悩まれる方も少なくありません。

このようなケースの多くは、「事前に一度も点検や相談をしていなかった」「寿命やリスクを知らずに、ギリギリまで使い続けていた」ことが背景にあります。決してご本人の責任ではありませんが、結果として「全部一度にまとめて対応しなければならない状況」を招いてしまうことがあります。逆に、数年前から少しずつ状況を確認していたご家庭では、「このくらいの費用がかかるかもしれない」と心構えができているため、想定外のショックが小さくて済む傾向があります。

9-3. 家族と相談できずにひとりで抱え込んだ例

特に60代・70代の方の中には、「子どもに迷惑をかけたくない」「お金の話をしたくない」といった思いから、住まいの問題をひとりで抱え込んでしまう方もいます。給湯器の不調やトイレのトラブルが続いていても、「何とか使えているから」と我慢を重ね、いよいよ限界を迎えてから慌てて対応することになってしまうことがあります。その結果、「もっと早く相談してくれれば良かったのに」と家族に言われ、ご自身も「本当はそうしたかった」と胸が痛む、という事例も少なくありません。

また、ひとりで決めてしまった工事の内容に、後から子ども世代が「もっと別のやり方もあったのではないか」と感じることもあります。これは、どちらかが悪いという話ではなく、「話し合う時間が持てなかった」ことが原因です。住まいのことは、将来的に相続や住み替えにもつながってくるテーマです。だからこそ、「相談することが迷惑になるのでは」と遠慮するのではなく、「一緒に考えてほしい」と素直に伝えることが、結果的にお互いの安心につながります。

9-4. 事前に話し合っていた家庭の安心感

一方で、節目のタイミングごとに「家のこと」を家族で話し合ってきたご家庭では、トラブルが起きたときの心構えが違います。たとえば、「給湯器はそろそろ交換時期だから、次に不調が出たら迷わず替えよう」「浴室は親が70代のうちに安全な仕様にしておこう」といった方針を共有していると、いざ症状が出たときも、「やっとタイミングが来たね」「予定通り進めよう」と前向きな気持ちで判断できます。

また、事前に「このくらいの費用は必要になるかもしれない」とおおまかに話し合っていると、急な見積もりを見ても動揺しにくくなります。家族で情報を共有していること自体が、「自分ひとりで決めなくて良い」という安心感を生みます。こうした家庭では、工事後も「みんなで決めたから納得感がある」「親のために良い選択ができた」と、前向きな気持ちで暮らしを続けている様子が印象的です。

9-5. 後悔しないための共通点

さまざまな事例を見ていくと、後悔が少ないご家庭にはいくつかの共通点があります。第一に、「気になったタイミングで小さく相談している」こと。大きなトラブルになる前に、「最近少し気になる」「専門家の目で一度見てもらいたい」と動けるかどうかが、のちの選択肢の多さを左右します。第二に、「緊急のことと、将来のことを分けて考える」習慣があること。今すぐ対処すべき場所と、数年かけて考えればよい場所を整理しておくことで、判断の迷いが減ります。

そして第三に、「家族で話し合う時間を持っている」ことです。完璧な結論を出す必要はありません。「今の家、これからどうしていこうか」「どこか不便に感じているところはない?」といった、ゆるやかな会話だけでも十分です。住まいの失敗は、情報不足よりも、「話さなかったこと」「先延ばしにしてしまったこと」が原因になっていることが少なくありません。気づいた人から、少しずつ動き出していく。それが、後悔の少ない選択につながる共通点です。

第10章|当社がご提供できる“予防型サポート”

10-1. 工事ありきではない相談の場として

「相談すると、きっと工事の話をされるのではないか」「見てもらったら、すぐに決めなければいけないのでは」と不安に感じて、業者への連絡をためらってしまう方は多いものです。当社が大切にしているのは、その逆です。まずは今の住まいの状態を一緒に確認し、「緊急性の有無」と「将来的な課題」を整理することから始めます。工事を前提にしたご相談ではなく、「今の家がどんな状態か知りたい」「これから何に備えておけばよいか聞きたい」という段階でも、安心してお声がけいただける窓口でありたいと考えています。

実際に、「まだ壊れてはいないけれど、年数的に心配だから一度見てほしい」「実家の親の家の状況が気になっている」といったご相談も多く寄せられています。その場で工事の話を無理に進めることはありません。むしろ、「今は様子を見て大丈夫な場所」「そろそろ準備を考えたほうがよい場所」「できれば早めに対処したい場所」を整理し、選択肢をご説明することが、当社の役割だと考えています。

10-2. 住まいの健康診断という考え方

人の体と同じように、住まいにも「健康診断」が必要です。症状が出てから病院に行くのではなく、症状が出る前に検査をしておくことで、大きな病気を防いだり、早期に治療したりできるのと同じように、住まいもトラブルが起こる前に状態を把握することで、余裕を持った対応ができます。当社では、設備や水まわり、外回りなどを総合的にチェックし、「今の状態」と「将来のリスク」を分かりやすくお伝えすることを心がけています。

診断の結果、すぐに対処が必要な場所がなければ、それはそれで安心材料になります。「とりあえず今年は様子を見て大丈夫」「次に気をつけるべきタイミングはこのくらい」という目安が分かるだけでも、日々の不安は大きく減ります。逆に、気になる部分が見つかった場合も、「どの程度の緊急性があるのか」「どのような選択肢が考えられるのか」を、工事ありきではなく冷静に整理することができます。

10-3. 50代の方へのサポート

50代の方は、「自分たちの家」と「親世帯の家」の両方について考える機会が増える世代です。仕事や家族の予定も忙しく、「時間ができたらじっくり考えよう」と思いながら、つい後回しになってしまいがちでもあります。当社が50代の方にご提供したいのは、「今すぐ工事を決めること」ではなく、「情報を整理するための場」です。

たとえば、「築30年の自宅をこの先どう使いたいか」「実家の住まいで心配なところはどこか」といったテーマを一緒に整理し、設備の寿命やメンテナンスのタイミング、費用感の目安などをお伝えします。そのうえで、「すぐに動くべきこと」と「数年かけて準備すればよいこと」を分けて考えることで、「何から手をつければいいか分からない」という状態から抜け出しやすくなります。

10-4. 60代の方へのサポート

60代の方は、「今の家で、あと何年、どのように暮らしたいか」を具体的に考え始める時期です。お仕事を続けている方、引退された方、ご夫婦で暮らしている方、お一人で暮らしている方など、生活スタイルはさまざまですが、「これからの自分たちの身体や暮らし方に合った住まいに整えたい」という思いは共通しています。当社は、この世代の方に対して、「将来の安心を見据えた優先順位づくり」をお手伝いします。

具体的には、浴室やトイレ、階段や出入口など、毎日の動作と深く関わる場所を中心に、安全性と使いやすさの観点からチェックを行います。そのうえで、「今のうちに整えておくと安心な場所」「もう少し様子を見ながら考えてよい場所」を整理し、ご予算やスケジュールに合わせたステップをご提案します。「一度にすべて」ではなく、「段階的に少しずつ」整えていく考え方を共有することを大切にしています。

10-5. 70代の方へのサポート

70代になると、「大掛かりなことはもうしたくない」「できるだけ今の生活ペースを崩したくない」というお気持ちが強くなるのは自然なことです。その一方で、「転んだら怖い」「もし設備が壊れたらどうしよう」という不安も、より現実味を帯びてきます。当社が70代の方に大切にしているのは、「安心して暮らし続けるために、本当に必要なところだけを、無理なく整える」という視点です。

たとえば、毎日必ず使う浴室やトイレ、寝室からトイレまでの動線など、生活に直結する場所を優先して点検し、安全性や使いやすさの観点から最小限で最大の効果が期待できる改善をご提案します。また、「何かあったときはここに連絡すれば相談できる」という安心感を持っていただけるよう、説明の仕方や情報提供にも配慮しています。設備や工事の話だけでなく、「これからもこの家で安心して暮らすために、どんな準備ができるか」を一緒に考える伴走役でありたいと考えています。

第11章|世代別に考えるこれからの住まい方

11-1. 50代世帯の住まい観:これからの20年を見据えて

50代は、「子どもが独立し始める」「親世帯の介護が現実的なテーマになる」といった、人生の転換点が重なる世代です。その中で、「この家をこれからどうしていくか」という問いも、少しずつ頭をよぎるようになります。まだ体力もあり、仕事も現役という方が多いため、今すぐ困っていることは少ないかもしれませんが、「今のうちに情報だけでも整理しておく」ことが、この先の安心につながります。

50代の住まいの考え方で大切なのは、「短期的な不便」だけでなく、「10年後・20年後の自分たちの姿」をイメージすることです。たとえば、「60代になったとき、階段の上り下りはどう感じるか」「70代になったとき、この浴室やトイレは不安なく使えるか」といった視点で家の中を見直してみると、今まで気にならなかった段差や動線が、将来の課題として浮かび上がってくることがあります。それに気づけた時点で、すでに一歩前に進んでいると言えます。

11-2. 60代世帯の住まい観:無理をしない暮らしへのシフト

60代になると、「以前ほど無理がきかなくなってきた」と感じる場面が増えてきます。階段の上り下りに少し息が切れたり、重いものを運ぶのがつらくなったり、冬の冷えがこたえるようになったり…。それでも、「まだ大丈夫」「もう少し様子を見よう」と、これまでの生活スタイルをそのまま続けてしまう方も多いものです。

しかし、この年代は、「頑張る暮らし」から「無理をしない暮らし」への切り替えを意識することが大切です。たとえば、「浴槽の高さを少し低くするだけで入浴が楽になる」「手すりをつけるだけで階段の不安が減る」「掃除しやすい設備に替えることで、家事の負担が軽くなる」といった、小さな工夫が暮らしの質を大きく変えることがあります。60代は、「本格的に困る前に、将来に向けた下準備をしておける最後のゆとりあるタイミング」と言ってもよいかもしれません。

11-3. 70代世帯の住まい観:安全と安心を最優先に

70代になると、「できること」と「誰かに頼った方が良いこと」の境目が、少しずつ変わってきます。住まいの中でもっとも大切になるのは、「転ばないこと」「冷えすぎないこと」「無理をしないこと」です。これらは、どれも大げさな話ではなく、日々の小さな場面の積み重ねから守っていけることです。

たとえば、浴室や脱衣所の温度差を減らす、出入口の段差をなくす、階段や廊下の照明を十分に確保する、夜間の動線に障害物を置かない、といった対策です。また、「何かあったときにすぐ連絡できる相手がいる」ことも、精神的な安心につながります。70代の住まい方は、「できるだけ頑張る」ことではなく、「安心して暮らすために、周りの力も上手に使う」方向にシフトしていくことがポイントです。

11-4. 子世代との住まいの話し合い

住まいのことは、本来、家族全員に関わるテーマです。しかし、「親の家のことだから」と遠慮したり、「子どもに心配をかけたくない」と話題にしなかったりして、長いあいだ共有されないままになっているケースも少なくありません。結果として、トラブルが起きたときに初めて状況を知り、「もっと早く話してくれれば…」とお互いに感じることがあります。

理想的なのは、節目のタイミングで少しずつ、住まいの話題を取り入れていくことです。「この家、これからどうしていこうか」「どこか心配なところはある?」といった、ざっくりとした会話から始めてかまいません。子世代にとっても、親の住まいの状態や考えを知っておくことは、将来の安心につながります。「工事をするかどうか」より前の段階として、「情報を共有する」「考えを聞いてもらう」ことを目的に、肩の力を抜いて話し合えると理想的です。

11-5. 住み続ける選択と、住み替えという選択

築30年を迎えた家に対して、「この家に住み続けるのか」「どこか別の場所に住み替えるのか」という選択肢が頭をよぎる方もいるかもしれません。どちらが正解ということはなく、それぞれのご家庭の状況や価値観によって最適な答えは異なります。ただひとつ言えるのは、どちらを選ぶにしても、「今の住まいの状態を正しく知っておくこと」が、大きな判断材料になるということです。

たとえば、「多少の手入れで、あと20年は十分に住み続けられそうだ」と分かれば、自信を持って「住み続ける」という選択ができます。一方で、「構造や設備に大きな課題があり、今後もかなりの費用がかかりそうだ」と分かれば、住み替えを検討する材料になるかもしれません。いずれにせよ、「知らないまま何となく決める」のではなく、「知ったうえで自分たちで選ぶ」ことが、後悔の少ない判断につながります。

第12章|まとめ|気づいた人から住まいは守れる

12-1. 緊急と計画を分けて考える大切さ

ここまで見てきたように、築30年の住まいには、「今すぐ対応したほうが良いこと」と、「時間をかけて計画的に考えればよいこと」が混ざっています。トラブルが起きると、どうしてもすべてが緊急事態のように感じてしまい、「どこから手をつければよいか分からない」という状態になりがちです。しかし、実際には、優先順位を整理して一つずつ考えていくことで、冷静に対応することができます。

まずは、「安全に関わる部分」「日常生活が成り立たなくなる部分」を最優先にし、そのうえで、「暮らしをより快適にする部分」「将来への備えとして整えておきたい部分」を、無理のないペースで考えていく。緊急と計画を分けて考えることは、「全部を一度に背負わなくて良い」と、自分自身に許可を出すことでもあります。

12-2. 「早く気づく」ことが一番の予防になる

住まいのトラブルや老朽化は、ある日突然起こるように見えて、実際には長い時間をかけて少しずつ進行しています。「そういえば最近、こんなことが増えてきたな」「前と比べて、ここが気になるようになってきた」という小さな違和感に早く気づけるかどうかが、その後の選択肢の幅を大きく左右します。早く気づくことは、決して不安を増やす行為ではなく、むしろ「備える時間が増える」という意味で、とても前向きな行動です。

逆に、違和感を感じながらも「きっと大丈夫」「もう少し様子を見よう」と先延ばしにしてしまうと、気づいたときにはすでに選択肢が限られている、という状況になりかねません。だからこそ、「少し気になる段階」で相談することを、自分自身に許してあげてほしいと思います。

12-3. 50代から始める備えと、60代の決断

50代の備えは、「情報を集めて整理すること」が中心です。住まいの状態や設備の寿命、これからかかりそうな費用の目安を知っておくだけでも、「何も知らないまま不安を抱えている」という状態から抜け出すことができます。そして60代は、その情報をもとに、「どのタイミングで何を整えるか」をゆっくり決めていく時期です。

すべてを一度に決める必要はありません。「この10年で、ここまでは整えておこう」「70代になる前に、この部分だけは済ませておこう」といった、ざっくりとした方針で構いません。それでも、「何となく流される」のではなく、「自分たちで選んで進んでいる」という感覚は、暮らしに大きな安心をもたらします。

12-4. 70代の安心は「ひとりで抱え込まないこと」から

70代以降の安心は、「すべて自分で頑張る」ことではなく、「必要なところで周りの力を借りる」ことから生まれます。住まいのことも同じです。「もう歳だから」と遠慮して何も相談しないのではなく、「今の家でこれからも安心して暮らしたい」と素直に伝えることが、結果的にご自身を守ることにつながります。

家族、信頼できる業者、地域の相談窓口など、頼れる先をいくつか持っておくことで、「何かあったときも大丈夫」という安心感が生まれます。住まいは、ひとりで守るものではありません。関わる人が少しずつ力を合わせることで、長く心地よい状態を保つことができます。

12-5. 築30年の家との上手な付き合い方

築30年を迎えた家は、「古くなったから終わり」という存在ではなく、「これからどう付き合っていくかを考えるステージに入った家」です。これまで家族を守ってきてくれた時間に感謝しながら、これからの自分たちにとって無理のない形に整えていく。そのプロセス自体が、暮らしを見直し、人生の次のステージを前向きに迎えるきっかけにもなります。

大切なのは、「完璧な家」を目指すことではなく、「今の自分たちにとってちょうど良い家」に近づけていくことです。気づいた人から、少しずつ。緊急のことから、順番に。家族と話しながら、一歩ずつ。そうして向き合っていくことで、築30年の家は、これから先の20年、30年も、心強いパートナーであり続けてくれます。

加藤工業株式会社 本社

  • 住所:〒485-0029 愛知県小牧市中央1丁目77番地
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  • FAX:0568-77-0924
  • 営業時間:8:30~17:30
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  • 公式サイトhttps://kato-kougyou.jp/

ライフエナジー館(ショールーム)

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わが家のマイスター 小牧店(TOILET BOUTIQUE)

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  • 営業時間:9:00~17:00(※17:00~18:00は電話対応)
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  • ホームページ受付:年中無休・24時間受付
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🏠 全工事種別カテゴリ 一覧(住宅リフォーム・リノベーション・設備)

 

【1. 水まわり(キッチン・バス・トイレ)】

  • システムキッチン(対面・アイランド型など)
  • ガスコンロ・IHクッキングヒーター
  • レンジフード・食洗機・浄水器
  • システムバス(ユニットバス)・浴室換気乾燥暖房機
  • 洗面化粧台・洗濯パン・洗濯水栓
  • トイレ(タンクレス・温水洗浄便座)
  • バリアフリー水まわり(手すり・引き戸)

 

【2. 給湯・給水・配管設備】

  • ガス給湯器(従来型・エコジョーズ)
  • ハイブリッド給湯器(エコワン)
  • 電気温水器・エコキュート
  • 太陽熱温水器
  • 水栓(蛇口)交換
  • 配管工事(給水・給湯・排水)
  • 凍結・漏水防止対策

 

【3. 室内空間リフォーム・内装】

  • クロス・壁紙張替え
  • フローリング・クッションフロア・畳
  • 建具交換(室内ドア・引き戸)
  • 収納リフォーム(クローゼット・造作棚)
  • 照明・コンセント配置変更
  • 室内窓・間仕切り壁設置
  • 断熱材の施工・内窓追加

 

【4. 増改築・リノベーション】

  • LDKリフォーム(対面キッチン・間取り変更)
  • 和室→洋室変更
  • 増築(部屋数追加・廊下拡張)
  • 減築(シンプル住まいへの変更)
  • フルリノベーション(スケルトン)
  • 中古住宅再生・リセール対応
  • 二世帯住宅化・店舗併用住宅リフォーム

 

【5. 外まわり・外装リフォーム】

  • 外壁塗装・サイディング張替え
  • 屋根塗装・屋根葺き替え・防水工事
  • 雨樋交換・破風板補修
  • 玄関ドア・サッシ交換
  • ベランダ・バルコニー・サンルーム
  • カーポート・ウッドデッキ・テラス屋根
  • 門扉・フェンス・アプローチ・駐車場整備

 

【6. 断熱・省エネ・創エネ設備】

  • 内窓(二重窓/インプラスなど)
  • 複層ガラスサッシ
  • 高性能断熱材・気密化リフォーム
  • 太陽光発電システム
  • 蓄電池システム
  • 床暖房・省エネ型エアコン
  • 高効率照明(LED)・自動点灯制御

 

【7. 電気・通信・安全設備】

  • 分電盤・ブレーカー交換
  • スイッチ・コンセント増設・移設
  • インターホン・テレビドアホン
  • 防犯カメラ・センサーライト
  • 火災報知器・ガス警報器
  • LAN配線・Wi-Fi設備工事

 

【8. バリアフリー・介護対応】

  • 段差解消・スロープ設置
  • 手すり取り付け(玄関・浴室・廊下など)
  • 引き戸化・開口部の拡張
  • 滑りにくい床材・視認性対策
  • 福祉用具設置対応・介護保険適用工事

 

【9. 空調工事・換気設備】

  • ルームエアコン取付・交換
  • 業務用エアコン(パッケージタイプ)
  • マルチエアコン(1台の室外機で複数部屋)
  • 床暖房・温水暖房設備
  • 24時間換気システム(第1〜3種)
  • 熱交換型換気ユニット
  • 空気清浄機能付き換気・室内空調設備
  • ドレン・冷媒配管工事・断熱巻き工事

【対応エリアのご案内】

加藤工業株式会社およびライフエナジー館・わが家のマイスター小牧店では、小牧市を中心に下記エリアまで幅広く対応しております。

小牧市・丹羽郡(大口町・扶桑町)・豊山町・春日井市・犬山市・岩倉市・一宮市・北名古屋市・名古屋市・江南市など、地域密着で迅速かつ丁寧な対応を心がけております。

住宅設備の修理・交換から、リフォーム・リノベーション・増改築まで、お気軽にご相談ください。
現地調査やお見積りも無料で承っております。

取り扱いメーカー】

LIXIL、TOTO、クリナップ、タカラスタンダード、パナソニック、トクラス、ノーリツ、リンナイ、ハウステック、サンワカンパニー、タカギ、高木パーパス、東洋キッチン、東邦ガス、YKK AP、ニチハ、ノダ、ケイミュー、ウッドワン、アサヒ衛陶、大建工業、永大産業、朝日ウッドテック、イクタ、ボード株式会社、丸岡材木店、住友林業クレスト、アイオーシー、ボッシュ、ミーレ、グローエ 他

システムバス・システムキッチン・トイレ・給湯器・ガスコンロ・レンジフード・増改築・内装・外壁屋根塗装・水まわり工事・小工事・リフォームなど

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築15年は「壊れたら対応」から「壊れる前に手を打つ」へ、考え方を転換する“資産価値を落とさないための投資”

第1章 築15年を迎えた戸建て・分譲マンションオーナーが必ず知っておくべき「見えないコスト」とは?

マイホームを取得してから15年。戸建てでも、分譲マンションでも、多くのオーナー様が「まだ普通に暮らせているし、特に困っていない」と感じている時期です。実際、雨はしのげる。お湯も出る。エアコンも回る。多少のきしみ音はあるけれど、日常生活に大きな支障はない。だからこそ、多くの方が「このまま特に大きなお金はかからないだろう」と安心してしまいます。

しかし、私は住宅業界で40年、お引き渡し直後の点検から築30年以上の大規模リフォーム、そして売却・相続の相談までずっと見てきましたが、築15年というのは実は分岐点です。これを境に、気づかないコストが一気に表面化し、まとまった出費が現実化しやすい時期に入ります。しかもその支出は、壊れてから慌てて対応すると高くつきます。逆に、前もって把握して準備できているオーナーは、驚くほど冷静に、そして安く済ませることができます。

1-1. 築15年は「保証が切れて、劣化が表に出始める」タイミング

日本の住宅には、構造や雨漏りに関する重要な部分について、法律で10年の初期保証(いわゆる「瑕疵担保責任」「瑕疵保険」などと呼ばれる部分)が定められています。引き渡しから10年が経過すると、この最低限の法的な守りが一度区切れます。その後は、ハウスメーカーや建築会社独自の「延長保証」や「アフターサービス」に移行しますが、これは自動的に続くものではなく、条件や手続きが必要なことがほとんどです。

そして引き渡しから15年が経つころには、外壁、防水、給湯、換気、サッシまわりなど、目に見えない部分を中心に「確実に劣化している部位」が現れます。ところが、オーナー様の多くは10年目の点検以降、メーカーや工務店に見てもらっていない場合が多く、劣化が静かに進んでいても“誰も気づいていない”状態になっています。

つまり、築15年とは「保証の切れ目」と「劣化の始まり」が重なる時期なのです。この時期をただ『まだ普通に暮らせるから大丈夫』と通り過ぎてしまうと、築20年目前で一気に費用が噴き出す、という流れになりがちです。

1-2. オーナーが想定していない主な費用項目

築15年を過ぎたあたりから、次のような費用が現実味を帯びてきます。これは戸建てでもマンションの専有部でも共通する内容です。ただし、マンションの場合はこれに加えて「共用部の修繕積立金の増額リスク」がのしかかります。

外壁・屋根・バルコニー防水

サイディング外壁であれば、目地のシーリング(コーキング)が硬化・ひび割れし、結果的に雨水が入りやすくなります。屋根についても、スレート系屋根材の場合は塗膜が紫外線で傷み、吸水しやすくなっていきます。一見すると「色あせただけ」に見えるのですが、実際には防水性能が下がっており、雨水が下地に回り込みやすい状態になっています。バルコニーやベランダ床の防水層も同様で、表面に細かなクラック(ひび)やすり減りが出ている場合、そこから雨水が侵入し、最終的には室内の天井や壁クロスにシミとなって現れます。

この種の修繕は、築10年〜15年の間に一度入れておくのが理想です。ところが実際には「まだ目立つ雨漏りはないから」として放置されてしまい、築18年〜20年頃に初めて大きな雨染みが現れてから緊急工事になることがあります。そうなると、単なる外壁塗装で済んだはずの内容が、内部の下地補修や室内の復旧工事まで含む“雨漏り修繕”になり、一気に費用が跳ね上がります。

給湯器・換気扇・トイレ・水まわり設備

給湯器は10〜15年が交換の目安と言われます。寿命が近づくと「お湯が安定しない」「異音がする」「エラーコードが時々出る」といったサインは出ますが、完全に止まるまでは“なんとなく騙し騙し使えてしまう”のが怖いところです。いざ冬場に壊れると、お湯がまったく出ないという生活に直結したトラブルになり、「即日交換お願いします」と緊急案件化してしまいます。緊急交換は選べる機種も限られ、費用交渉もしづらいのが現実です。

換気扇・レンジフード・浴室暖房乾燥機などの電動機器も、15年を過ぎたころから音が大きくなったり、回転が弱くなったりします。放置すると浴室の湿気が抜けにくくなり、カビや腐朽の原因になります。便器・タンク・水栓金具なども、15年を超えるとパッキン劣化や水漏れが目立ちます。水漏れは床下の腐れやシロアリ呼び込みにも直結するため、軽視は禁物です。

内装(床・建具・クロス)

床がきしむ、ドアが閉まりにくい、引き戸が重い。これらは「家が古くなったからまあそういうものだ」と片付けられがちですが、実際には床下の束や下地が緩んでいたり、建具の反りや金物の摩耗が原因であることが多いです。放置すると開閉のたびにストレスとなるだけでなく、ドア本体や枠を丸ごと交換する事態に発展し、費用が膨らみます。小さな調整の段階で手を打つことが、長期的にはもっとも安く済むコツです。

外構・エクステリア

駐車場の土間コンクリートのひび割れ、門扉やフェンスのがたつき、カーポート屋根の劣化や変色なども15年を超えると顕著です。特にカーポート屋根パネルの固定金具がゆるみ、強風で飛散する事故は実際に起きています。外構は「暮らしに直結していない」と後回しにされやすいのですが、強風・台風のときには安全性の問題にもなるため、早めに点検対象に入れておくべき場所です。

1-3. マンションオーナーに特有の見落とし費用

分譲マンションをお持ちの方は、もうひとつ視界に入れておくべきものがあります。それが「管理組合と修繕積立金」です。築15年を過ぎると、多くのマンションは1回目〜2回目の大規模修繕(外壁・屋上・共用廊下・手すり・防水など)を本格的に検討する時期に入ります。当然、その費用は修繕積立金から捻出されます。

しかし、もともとの積立金が十分でない場合や、想定より劣化が早い場合、管理組合から「積立金の値上げ」あるいは「一時金の徴収」といった話が出てきます。つまり、オーナーであるあなたが、月々の管理費・積立金とは別に、追加で数十万円単位の負担を求められる可能性があるということです。

この話は本当に多くの方が「聞いていなかった」「そんなこと急に言われても困る」と驚かれます。ですが管理組合としては避けることができません。なぜなら、共用部の外壁や屋上防水は “あなた個人の部屋だけ”の問題ではなく、建物全体の寿命、安全性、そして資産価値に直結する部分だからです。ここを後回しにするという選択肢は現実的にはほとんどありません。

1-4. 予算が準備できている人/できていない人で将来がまったく違う

同じ築15年でも、将来がまったく変わります。共通点はシンプルで、「事前にお金の位置づけをしていたかどうか」です。10年目までにほぼノーメンテで、15年を過ぎてもノーチェックで、突然20年目に屋根から雨漏りした場合、そこからの修繕は一気に高額になりがちです。さらに、老朽設備が同時期に複数壊れることもあります。給湯器・浴室暖房・トイレ・サッシの結露対策などが同時に来ると、100万円単位はすぐに到達します。

逆に、「15年というのは“次の10〜20年住み続けるための再点検のタイミング”だ」と理解して準備した人は、支出を“計画投資”として扱えます。計画的な投資は交渉の余地があります。複数工事項目をまとめることで足場や人件費の重複を減らせる、複数の見積もりを比べられる、省エネや断熱改修と組み合わせて補助金の対象にできる、といった具体的な手段が取れるのです。

1-5. なぜ多くのオーナーが「大きな支出が来る」という事実を知らないのか

理由は3つあります。

1つ目は、建物というのは劣化が静かに進むため、「危機感を与えるサイン」が室内に出るころにはすでに手遅れになりがちなこと。例えば雨漏りのシミが天井に現れるというのは末期症状であり、その時点では単なるコーキング打ち替えでは済まないことが多いのです。

2つ目は、保証や定期点検に関する書類が分散管理されていること。引き渡し当時のファイル一式をそのままきれいに保管しているご家庭は意外と少数です。引っ越しや模様替えでどこに行ったかわからない、担当営業が退職してしまった、ハウスメーカー自体が合併・統合して連絡先が変わった、などの理由で「誰に何を聞けばいいのか分からない」状態が起きています。

3つ目は、ネット検索で出てくる情報が断片的であること。『外壁塗装は◯年ごと』『給湯器は◯年で交換』といった単発の情報はあっても、実際には外壁・屋根・バルコニー・給湯・水まわり設備・内装・外構が同時に15〜25年のタイミングで影響してくる、という“全体像の整理された説明”にはなかなか出会えません。その結果、気づいたら「どこから手をつければいいかわからない」という不安だけを抱えてしまうのです。

1-6. 結論:築15年は、次の10年を設計し直すタイミング

築15年は「壊れたら対応」から「壊れる前に手を打つ」へ、考え方を転換する時期です。特に、これからも住み続ける予定の戸建てや、ローンを払い終える前のマンションをお持ちのオーナー様にとって、15〜20年の手当ては住まいを“守るためのコスト”であると同時に、“資産価値を落とさないための投資”です。

次章では、そのときに必ず関わってくる「延長保証」という仕組みのメリットと注意点を、現場目線で解説します。多くの方が『延長保証に入っているから安心』と言います。しかし、その“安心”が本当にあなたの家を守れる安心なのか、正しく理解できているでしょうか?

第2章 「延長保証があるから安心」は本当に安心か? ― 40年現場から見た、保証のリアルと落とし穴

築10年を過ぎた頃から、ハウスメーカーや建築会社から「アフター点検」「長期保証制度」「延長保証プラン」などの案内を受けた方は多いはずです。これらは一見すると心強く、『これでまだまだ安心して住めるんだな』と思わせてくれる言葉が並びます。しかし、私は長年オーナー様からこういう相談も受けてきました。「延長保証に入ってたはずなのに、実際は対象外だった」「保証のはずが有償と言われた」「そもそも保証が切れていた」。なぜこのギャップが生まれるのでしょうか?

2-1. 延長保証とはそもそも何を守る仕組みか

多くのハウスメーカーが用意している延長保証は、主に『構造耐力上主要な部分』と『雨水の侵入を防止する部分』に関するものです。これはつまり、柱・梁・基礎など建物を支える部分や、屋根・外壁など雨漏りにつながる部位が中心です。逆に言えば、内装のキズ、扉のたわみ、床鳴り、換気扇、給湯器、トイレの不具合など、日常生活でよく気になる部分は、延長保証では対象外であるケースが非常に多いのです。

ここで重要なのは、「あなたが困る場所」と「延長保証が守る場所」は必ずしも一致しない、ということです。例えばお湯が出ない=生活は直撃レベルで困る。しかしその給湯器本体は建物の主要構造でもなければ雨漏りでもないので、延長保証の範囲外であることがほとんどなのです。

2-2. 延長保証を受けるための前提条件

延長保証は、10年経過後も自動的に継続されるものではありません。多くの場合、オーナー側に次のような義務や条件が課されています。

  • 定期点検を受けること(10年、15年などの節目)
  • その点検で指摘されたメンテナンス工事を、メーカー指定もしくはメーカー承認業者で行うこと
  • 勝手な改築・増築をしていないこと
  • 雨漏りなどの不具合が出た場合、すぐメーカーに報告し、記録を残していること

このあたりを「なんとなく把握しているつもりで書面は読んでいない」という方が多く、実はここが最も大きな落とし穴です。例えば、10年目点検の案内がポストに入っていたけれど忙しくてスルーし、15年目に雨染みを見つけて連絡したら『点検を受けていないので長期保証外です』と説明されるようなケースは、珍しくありません。

2-3. “保証が切れる”典型パターン

保証書と点検記録を見直すと、次のようなパターンで延長保証が無効化されていることがあります。

1) 指定業者以外で外壁を塗り替えた

外壁塗装・屋根塗装を「知り合いの塗装屋さん」や「訪問販売系の業者」で行った場合、ハウスメーカー側から見ると“勝手な施工”扱いになり、その後の雨漏りは保証対象外と言われることがあります。オーナーからすれば「ちゃんと塗装したのに、むしろ良かれと思ってやったのに」という気持ちなのですが、メーカー側は『当社の仕様以外の塗料・工法を使ったので責任は持てません』というロジックになるのです。

2) 定期点検を受けていない/報告していない

点検案内の封筒・ハガキ・メールなどを1回見逃しただけで、その後の長期保証が打ち切られることもあります。これを「そんなの聞いてない」というオーナー様は多いのですが、メーカーからすれば『点検記録がない=状態管理ができていない=保証できない』という説明が成り立ってしまうのです。

3) 小規模な雨水侵入を放置した

サッシまわりやバルコニーの排水不良などで、じわじわと雨水が入っていたにも関わらず、オーナー様が「まあ拭けばいいや」と放置してしまう。後になってから『実は長期間にわたる水分侵入が原因で下地が腐食していた』とわかったとき、メーカー側からは『早期連絡がなかったので保証対象外です』と整理されることもあります。つまり、「小さい変化」と思って放っておいたことが、後で“自己責任扱い”になることがあるのです。

4) 災害・地震・台風被害

台風で屋根材が一部はがれた、地震で外壁にクラックが入った。このようなケースでは、延長保証の対象ではなく、火災保険・地震保険での対応を求められることが一般的です。この線引きが曖昧なまま「保証で直してくれると思っていた」と期待してしまい、保険の申請時期を逃すことがあるので注意が必要です。

2-4. 延長保証でカバーされない“生活直撃系トラブル”

ここで強調しておきたいのは、延長保証は住宅全体をまるごと面倒見てくれる「万能安心パック」ではない、ということです。むしろ逆で、日常のストレスや生活の質に直結しやすい部分ほど、延長保証の範囲外になりがちです。

  • お湯が出ない(給湯器)
  • お風呂が暖まらない(浴室暖房乾燥機)
  • トイレが水漏れする/止水不良
  • レンジフードから異音、吸い込みが悪い
  • リビングのエアコンが突然停止
  • サッシのすき間風・結露によるカビ

このあたりは、ほぼ確実に「自己負担」となります。ここで後手に回ると『壊れたときに都度交換』という形で緊急コストが積み重なります。特に給湯器のようなライフライン設備は、壊れた瞬間から生活の質が直撃で下がるため、値段交渉どころではなくなります。

2-5. オーナーとして今すぐやっておくべきこと

では、築15年の今、オーナーとして何をしておくと良いか。私から見ると、次の5つは優先度が高いです。

1) 保証書と引渡しファイルを探し出す

まずは書類の確認です。「延長保証の条件」「期限」「対象範囲」「指定業者の条件」「点検履歴の扱い」などを、自分の目でチェックしておきましょう。たったこれだけで、いざというときの交渉力がまったく違ってきます。

2) 10年目以降の点検履歴を把握する

10年時点・15年時点などで点検を受けたか?指摘事項はあったか?その補修はメーカー発注でやったか?それとも地元の業者に頼んだか?これらを整理しておくことが、保証継続の可否を左右します。もし点検を受けていないなら、今からでも「現状診断」という形で依頼できる場合もあります。

3) 災害分は火災保険・地震保険でカバーできるか確認する

延長保証に災害は含まれないケースがほとんどです。つまり災害ダメージは保険の世界になります。保険証券の補償範囲・免責・申請期限も必ず確認しておきましょう。特に台風・豪雨の水のまわりは、放置するとカビや構造材の腐朽に直結します。

4) 設備機器は“壊れてから”ではなく“壊れる前に積立”する

給湯器、浴室暖房、換気、トイレ機器など、いわゆる「住宅設備」は延長保証対象外になりがちです。これらは10〜20万円台の修理・交換費用が一気に来るので、毎月少しずつでも専用の積立をしておくのが現実的です。延長保証=住宅のすべてを守ってくれる、ではないと理解したうえで、生活直撃系の設備には自分側の予算準備が必要です。

5) リフォーム・修繕の前に必ず「保証に影響しますか?」と聞く

外壁塗装や屋根補修、バルコニー防水、窓交換、断熱改修などの工事を検討しているなら、発注前に「この工事を外部業者に頼むと、御社の保証は切れますか?」とハウスメーカー側に確認してください。これを聞かずに着工してしまうと、のちのち延長保証が失効してしまうことがあります。ここを聞くのは、オーナーの当然の権利です。

2-6. 延長保証は“神の盾”ではなく、“正しく使えば役に立つ道具”

結論として、延長保証は万能ではありません。しかし、だからといって「意味がない」というわけでもありません。延長保証の本当の価値は、建物の構造と防水に関して、致命傷になる前にメーカー側の目と責任を引き続き入れ続けられるという点にあります。特に、基礎、外壁、屋根、バルコニーまわりの防水や下地腐食は、放置すると修繕額が桁違いになります。延長保証は、その“桁違いゾーン”をカバーする傘になりうるのです。

ただし、その傘の柄(=条件やルール)を自分で握っておかなければ、いざという時に開かない傘になってしまう。これが、築15年以降のオーナーが最も注意すべきポイントだと言えます。次の章では、ここまでの話をいったん踏まえたうえで、「では実際にどこまで直すべきか?」「どこは延命でよいのか?」という判断を、“大規模改修”という選択肢から考えていきます。

第3章 戸建て住宅の「大規模改修」という考え方 ― 15年以降の家をどう延命し、どう価値を守るか

築15年を過ぎると、多くのオーナーが悩むことになります。「外壁は塗り替えるべき?」「給湯器は交換?」「お風呂が寒いのは我慢?」「床のきしみは放置で平気?」そして最後に出てくるのがこれです。『いっそまとめてやったほうが安いのでは?』

これが、いわゆる“戸建ての大規模改修”という考え方です。単発の修繕をバラバラと出たとこ勝負で積み上げるのではなく、屋根・外壁・防水・窓・断熱・水まわり・内装・電気設備といった複数の項目を「まとめて見直す」というアプローチです。このやり方には明確なメリットがあります。それは、家をもう一度“これからの10〜20年に合った仕様”に最適化し直せるということ。そして、結果的にバラバラ工事よりトータルコストを抑えられることです。

3-1. 大規模改修とは何をする工事か

大規模改修とは、単純に言うと「家全体の健康診断と集中治療」を同時にやるイメージです。具体的には次のような工事がセットになります。

  • 外壁・屋根の再塗装または張り替え(防水性能と外観の再生)
  • バルコニーやベランダの防水層の再施工(雨漏り予防)
  • サッシ・窓まわりの断熱/気密性改善(結露・冷暖房効率の改善)
  • 給湯器・浴室暖房・キッチン機器等の設備更新(省エネ・故障予防)
  • お風呂・キッチン・トイレなど水まわりの総入替(衛生性・快適性アップ)
  • 床や建具の補修・貼り替え・調整(日常のストレス改善)
  • 手すり設置や段差解消などのバリアフリー改修(将来の暮らし方の準備)

バラバラに発生した不満要素(結露・寒い浴室・荒れた外壁・古びたキッチン・床鳴り)を、ひとつずつ「応急処置」ではなく「再設計」でまとめて処理する、というのが大規模改修の考え方です。

3-2. なぜ「まとめて」やると安くなるのか? 足場・人件費・同時施工の合理性

リフォームは、工事そのものの金額だけではなく「段取り」の費用がかかります。たとえば外壁を塗り替える時には、家の周囲に足場を組みます。この足場は数十万円かかることがあります。屋根補修のときも足場。バルコニー防水のときも足場。外壁のシーリング打ち替えのときも足場。つまり、バラバラにやれば足場代は何度もかかります。

逆に、大規模改修としてまとめて行えば、1回の足場で屋根・外壁・バルコニー防水・雨どい交換などを一気に施工できます。足場費・養生費・職人の移動や段取りのコストが一度で済むため、トータルで見ると同じ内容でも30%前後安くなることは珍しくありません。これは築15年〜25年の戸建てで特に効いてきます。なぜなら、まさにその時期に外装・防水系の更新サイクルが重なってくるからです。

3-3. “今の暮らし”ではなく“これからの暮らし”に合わせる

もうひとつのメリットは、機能の方向性を揃えられることです。築15年のときと築30年のときでは、家に求めるものは違います。たとえば次のような変化は自然に起きます。

  • 子ども部屋が不要になってきた/逆に子や孫が泊まる部屋が必要になった
  • 浴室や脱衣所が寒いと身体に負担が大きいと感じるようになった
  • 階段の上り下りが少し怖くなってきた
  • ガスコンロの火が不安になり、IHなど安全性の高い機器に関心が出てきた
  • 光熱費が気になるので、高効率給湯器や断熱窓に興味がある

これは“贅沢のためのリフォーム”ではありません。これは“これからの10〜20年を安全に暮らすための家のチューニング”です。大規模改修は、この「これからの暮らし方」をベースに家を再編するという意味を持ちます。単純に新築に戻すのではなく、「今の年齢・今の家族構成・今の健康状態」に合わせて、家そのものをアップデートする行為なのです。

3-4. 費用感の目安と、どこまでやるかの線引き

実際の費用感は家の大きさや仕様によって変わりますが、イメージとしては次のようなレンジがよくあります。

改修メニュー 内容例 目安費用帯
外壁・屋根・防水 外壁塗装/シーリング打替え/屋根塗膜保護/バルコニー防水再施工 150〜250万円
水まわり総リニューアル キッチン・浴室・洗面・トイレの同時刷新、配管確認 300〜500万円
断熱・窓 内窓設置やサッシ交換、床下断熱・天井断熱補強 100〜200万円
設備・給湯・空調 高効率給湯器/浴室暖房換気乾燥機/24時間換気設備更新 150〜400万円
内装・建具・バリアフリー 床の貼替え、建具調整交換、手すり設置、段差解消 50〜150万円

もちろん、すべてを一度に行えば800〜1,200万円規模になることもあります。ただし、これは「新築し直す」と比べると圧倒的に安い金額で、しかも間取りや周辺環境(学校区・通勤距離・ご近所関係)といった今の生活基盤をそのまま残すことができます。言い換えると、大規模改修とは「建て替えほどの費用はかけずに、いまの家を次の20年仕様にする」という考え方です。

3-5. 補助金・減税・住宅ローンとの関係

大規模改修には、場合によっては国や自治体の補助金・助成金・優遇制度が活用できます。たとえば、断熱窓・高効率給湯器・バリアフリー化・耐震補強などは、年度ごとに支援策が変わります。また、リフォームローンや住宅ローンの借り換えによって、低金利で資金を組み直せるケースもあります。これは“現金一括払いで我慢するかどうか”という発想から、“長期的な住まい方に合わせて資金計画を設計する”という発想に切り替えるチャンスでもあります。

特に、築15年〜20年というのは、まだ家族の生活が続いている世代でもあり、同時にご自身の将来の健康・介護・働き方の変化も見えてくる世代です。この時点で、断熱性・段差解消・浴室の安全性・トイレの動線などを一気に整えておくと、後の10年間で感じるストレスが大きく減ります。これは医療や介護の観点から見ても非常に重要です。転倒リスクの少ない床、冬でも冷えすぎない浴室などは、日常生活の安心感を著しく高めます。

3-6. 「延長保証」と「大規模改修」は競合ではなく役割が違う

延長保証は、主に家の“骨格”と“雨水の侵入”という致命傷になりやすい部分を守る仕組みです。一方、大規模改修は、あなたの暮らしの現在と未来に合わせて家自体をチューニングし直す取り組みです。どちらかを選べばもう片方はいらない、というものではありません。むしろ、両方を正しく理解して使い分けることで、住まい全体のリスクとコストをバランスよく抑えることができます。

延長保証は「壊れた時に一定条件下でメーカーが責任を取ってくれる」後ろ盾。一方、大規模改修は「壊れる前に、そもそも弱点を作り直す」 forward型メンテナンス。延長保証だけに頼っていると、生活に直結する設備や寒さ・結露・段差といった“暮らしの質”は取りこぼされます。逆に、リフォームだけを積み上げて延長保証をまったく意識しないと、構造や防水に関する致命傷リスクへの備えが薄くなります。

3-7. 結論:築15年の意思決定は「これからの10年をどう生きたいか」の宣言になる

築15年というのは、単に家が古びてくる時期ではありません。あなたの家族構成や健康状態、働き方、将来の暮らし方が見え始める節目です。だから本来、築15年以降の改修は“修理”ではなく“これからの暮らしを設計する行為”であるべきです。

まだまだこの家に住み続けたい。子や孫が帰省してくる場所として保ちたい。将来、自分や配偶者の体力が落ちても安全に暮らしたい。そういった想いがあるなら、大規模改修・延長保証・設備更新のどれをどの順番でやるべきかを、今の段階から地に足のついた形で整理しておくことが肝心です。

次の章では、実際に「何から手をつければいいのか?」という順番とチェックリストを提示します。大きなお金の話になってくるからこそ、正しい順番で考えるとムダが減ります。逆に順番を間違えると、保証が切れたり、同じ場所に2回足場をかけたりと、コストが積み上がってしまいます。

第4章 まず何から手をつける? ― 築15年オーナーのための優先順位チェックリスト

築15年を過ぎると、「あれも直したい」「ここも気になる」「保証も気になる」と、一度に色んな不安が頭に浮かびます。結果として、何も動けなくなるオーナー様も少なくありません。ここでは、40年住宅に関わってきた立場から、実際の現場で“これを順番にやった人はうまくいった”という優先順位をはっきりと提示します。

この優先順位は、(1)命や安全に関わるもの → (2)建物の寿命に関わるもの → (3)生活のしやすさ → (4)見た目や快適性 という順で考えています。この順番で整理すれば、費用のかけ方も含めて判断がしやすくなります。

4-1. 最優先は「安全」と「雨水の侵入」

まず確認してほしいのは、次の2つだけです。これは最優先で、お金をケチるべきではありません。

  • 雨が入っていないか?(雨漏り・滲み・結露由来のカビ)
    天井や壁紙にうっすらとしたシミ、サッシまわりやバルコニーの下部に黒ずみ、クローゼットの奥のカビ臭。このようなサインは「もう室内に症状が出ている」段階です。単純な塗り替えではなく、下地・防水層に踏み込んで直す必要があることが多いため、早期にプロ点検が必要です。
  • 腐食・シロアリ・床下の湿気はないか?
    床がふかふかする、押し入れや洗面所下の床が柔らかい、床下点検口(キッチンや洗面所の収納の底にある場合が多い)を開けたときに強い湿気・カビ臭がある。この状態を放置すると、土台・柱・合板などの構造部分に影響し、補修費が急激に高くなります。安全性の問題にも直結します。

住宅のメンテナンスを検討する際、「外観が古びてきたから外壁塗装かな」と考える方が多いのですが、実際の優先順位は逆です。まず内部に水が入っていないか、安全性が脅かされていないかを優先してください。外観の色あせは後回しでも、命と躯体は後回しにできません。

4-2. 次は「保証と書類」の確認

建物の状態が急を要するほど深刻でなければ、次のステップは「紙の確認」です。これはお金をかけずに今すぐできるのに、放置されがちな部分です。

ステップ1:保証書・取扱説明書ファイルを探す

新築引渡し時にもらったバインダー、工務店からもらったファイル、もしくはキッチン・給湯器・トイレなど設備ごとの保証書。ここに「保証期間」「点検条件」「指定業者に依頼してください」などの文言があります。

特に重要なのは、「延長保証」と書かれた資料があるかどうかと、「その延長保証に入っているか?入る予定があったか?」です。延長保証は自動継続ではないことが多いため、未加入のまま10年を過ぎると、15年目の時点で「あれ?もう対象外なんですか?」というズレが発生します。

ステップ2:点検履歴・修繕履歴をメモにまとめる

・10年目にメーカーやハウスメーカーの点検を受けたか?
・そのとき指摘はあったか?
・指摘箇所を直したのは誰か?(メーカー/地元業者/DIY)
・見積書・領収書は残っているか?

これらは将来的に「保証を継続できますか?」「この雨漏りは保証対象ですか?」という交渉の土台になります。住宅の世界では、「記録があるお客様」は強いです。逆に、記録がないと「申し訳ないのですが保証対象外で…」と言われる確率が上がります。

4-3. その次に「設備」と「日常ストレス」をチェック

ここまで来てようやく、給湯器やトイレ、換気設備、床鳴りといった“生活に直結する部分”を整理していきます。これは延長保証ではカバーされにくい部分なので、基本的には自己防衛になります。

  • お湯が突然止まったら困る? → 給湯器の年式と状況を確認し、交換費用の目安を知っておく。
  • 冬の浴室が寒い? → 浴室暖房・断熱のリフォームや、ヒートショック対策の必要性を検討。
  • トイレの水漏れ・止水不良はない? → 床材がふやけていたら床下まで要確認。
  • 床鳴り・ドアの開閉不良は? → 我慢すればいい問題ではなく、転倒・ケガ・ストレスの要因になる。

これらは「壊れそうな部分の予算を積み始める」領域です。突然の故障=突然の10万〜30万円、というのは家計へのダメージが大きいので、あらかじめ“生活系のものは延長保証では守られない”と理解したうえで積立しておくのが現実的です。

4-4. 最後に「見た目」「快適性」「暮らし方の改善」

ここでようやく、外観をどう整えるか、内装をどうアップデートするか、収納をどう増やすか、というテーマに入ります。たとえば次のような内容です。

  • 外壁を塗り直して家としての印象を回復したい
  • キッチンを最新型に変えて家事効率を上げたい
  • リビングの仕切りを取り払い、広い空間にしたい
  • 書斎スペースや在宅ワーク用の小部屋をつくりたい

これらは「生活の質」「暮らし方の満足度」に直結します。ここまで優先順位を下げてきたのは、お金をかける順番を間違えないためです。安心・安全・寿命の確保を先にやることで、その後の“快適リフォーム”は落ち着いた判断のもとで進められますし、予算配分も現実的になります。

4-5. まとめ:順番を間違えると、お金は倍速で消える

いちばん避けたいのは「キッチンを新しくした直後に、雨漏りが見つかって壁を壊すことになった」というパターンです。せっかくの新品設備の周囲を再解体することになり、手戻りのコストがかさみ、精神的なダメージも大きい。だからこそ、(1)命と防水、(2)保証と記録、(3)設備と日常、(4)快適性・見た目。この順番を守ると、ムダな二度手間を避けつつ、家の価値と暮らしの満足度を一緒に守ることができます。

次章では、この優先順位を守った人と守らなかった人とで、将来どのくらい差が出るのか、実際のパターンを紹介します。良い例も、悪い例も、どちらも本当にあった内容を元にしています。自分の家はどちら寄りか、ぜひ照らし合わせてみてください。

第5章 現場で本当にあった「もったいない失敗」と「賢い成功」

長く家を見ていると、オーナー様の判断ひとつで、10年後の暮らしがまったく違ってしまうことを痛感します。ここでは、実際の現場でよくあるパターンを、やや一般化したかたちでご紹介します。どれも“特別な話”ではなく、築15年以降の家では誰にでも起こりえることです。

5-1. 失敗例その1:「外壁塗装は安い業者で済ませたのに、結果的に高くついた」

築16年の戸建て。外壁の色あせが気になり、訪問販売の塗装業者から「今なら安くできますよ」と声をかけられたオーナーが、メーカーや建築会社に連絡せずそのまま契約しました。見積は確かに安かった。仕上がりもぱっと見はきれいでした。

ところが2年後、雨の日に窓枠からじわっと染みが出て、壁紙にうっすらシミが残るようになりました。ハウスメーカーに相談したところ、「当社指定の材料・工法ではないため、延長保証は適用できません」と説明されました。結果として、外壁の一部をはがし、内部の下地や防水層を修繕し、室内のクロスや断熱材まで復旧する工事が必要になりました。費用は、もともと払った外壁塗装の金額をはるかに上回りました。

オーナーの感覚としては「ちゃんと塗ったのに、なぜ?」です。しかしメーカー側の考え方は「元の仕様と違う施工をされた以上、その後の雨水侵入は当社では保証しきれない」というもの。このズレが、お金に直結します。“安く塗れた”と思った判断が、延長保証を失い、結果的に何倍もの修繕費を呼び込むという、非常によくある失敗パターンです。

5-2. 失敗例その2:「給湯器が止まってから慌てて交換。選べない・高い・待つ」

築18年の戸建て。冬の夜、お湯が出なくなりました。家族は当然大混乱です。オーナーは急いで業者に連絡し、「とにかく明日にはお湯が出るようにしてください」と依頼しました。結果、高効率タイプではない在庫品を、ほぼ定価に近い価格で即日交換することに。

落ち着いて考えれば、省エネタイプに切り替えるチャンスでもあり、補助金を活用できる可能性もあったはずです。しかし、生活インフラが止まった状態ではそんな交渉はできません。「選ぶ」余地がほぼゼロになってしまうのです。これはとにかく多いケースで、事前に「うちの給湯器は何年選手か?」「交換するとしたらいくらくらいか?」を把握していれば、防げた出費でした。

5-3. 失敗例その3:「点検記録がなくて、保証の話が進まない」

築15年を過ぎたあたりで、天井にシミが出始めたオーナー。過去の10年点検の報告書も、補修の領収書も手元に残していませんでした。ハウスメーカー側に相談すると、「点検履歴が確認できず、お客様のほうで外壁メンテナンスをされたのか、またその工事内容がどういうものだったのかも把握できません。どこの時点からの雨水か断定できないので、無償では難しいです」という回答。

オーナー様としては「そんな言い方をされると思わなかった」という気持ちになるのですが、メーカーの立場から見ると“いつからの不具合なのか、誰の工事の影響なのか”を切り分けられないものは保証できない、という理屈になります。これも、書類・記録の管理だけで避けられたはずの残念なケースです。

5-4. 成功例その1:「15年で“まとめて見直し”を決断し、以後の20年分まで整えた」

築17年の木造2階建て。オーナー夫婦は、これからの20年を見据えて「もう建て替えるつもりはない、この家で最後まで暮らしたい」とはっきり意思表示されました。そこで、外壁・屋根・ベランダ防水・雨どいの更新、サッシと断熱の一部強化、給湯器と浴室暖房の交換、浴室と洗面所のバリアフリー化を1回の改修工事としてまとめて実施しました。

工事金額はそれなりにかかりましたが、足場は一度で済み、複数の工事が同時進行できたため、合計コストは個別対応の総額よりも安く抑えられました。さらに、ヒートショック対策として浴室や脱衣所の寒さを抑える改修を入れた結果、「冬のお風呂が怖くなくなった」と奥様がはっきりおっしゃったのが印象的でした。これは金額では計れない価値です。

このご家庭は「延長保証はどこまで効くか」「どこからは自費になるか」「将来困るところは何か」を夫婦で紙に書き出し、優先順位を決めてから工事範囲を決めました。つまり、“なんとなく直す”ではなく、“これからどう暮らしたいかを決めてから家を合わせた”のです。

5-5. 成功例その2:「点検と記録をとにかく残した」

あるオーナーは、10年目点検の結果報告書、メーカーからの指摘事項、行った修繕の領収書や完了写真をすべてクリアファイルに入れて保管していました。15年以降にバルコニー床からの漏水が疑われたとき、ハウスメーカーとのやり取りがスムーズで、「この時点では問題なし」「この時期以降に劣化が進んだ可能性が高い」という話がすぐ共有され、保証の一部を適用してもらえました。

これは特別なことではありません。ただ、“家のカルテ”を持っているかどうかで、数十万円単位の自己負担が変わった、というだけの話です。家は一生モノと言われますが、家を守るのは“記録”という、とても現実的な道具なのです。

5-6. 成功例その3:「リフォーム前に『保証に影響しますか?』と必ず聞いた」

もうひとつ、シンプルだけど効果が大きい行動があります。それは、外壁・屋根・窓・防水などの工事を依頼する前に、必ず「この工事を御社以外でやったら保証は切れますか?」と確認することです。これは聞くだけでいいのです。これを聞かずに勝手にやってしまうと、後から「その工事は当社仕様外」として保証が効かなくなる場合があります。

今までの経験上、「ちゃんと確認するお客様」はメーカー側からも“きちんと住まいを管理したい方”だと認識され、対応がスムーズなことが多い。逆に、黙って外部業者に頼んでから事後報告だと、「それは当社の施工ではないので…」というスタートラインに立たされ、無償対応の可能性が一気に下がることがあります。

5-7. まとめ:あなたの家は、どちら寄りだったか?

この章で紹介した失敗例は、特別なレアケースではありません。むしろ、築15年を超える持ち家では本当によくある話です。そして成功例もまた、特別なセンスや専門知識がなくても実現できます。保証内容を読み返す。点検結果と領収書をファイルする。工事前にひとこと確認する。これだけで、住まいの将来コストは目に見えて変わります。

次の最終章では、ここまでの内容を「これから10年、20年住み続けるための宣言」としてまとめます。どこまで延長保証に頼るか。どこからは自分の計画投資と割り切るか。そして、“いまの家”を“これからの暮らし方に合った家”に変えていく具体的な考え方を、最終的な指針として整理します。

第6章 築15年は「壊れたら直す家」から「守りながら住み続ける家」への転換点

ここまで、築15年を過ぎた住宅オーナーが直面しやすい現実をお伝えしてきました。保証が切れ始める時期と、劣化や不具合が目立ち始める時期が重なる。延長保証は“何でも守ってくれる魔法の保険”ではなく、あくまで構造・防水などの致命傷ゾーンを守るための仕組み。給湯器やトイレといった生活直撃の設備は、むしろ自己防衛が必要。そして、外壁・屋根・水まわり・断熱・バリアフリーなどをまとめて見直す「大規模改修」という考え方は、単なる贅沢ではなく、これからの10年〜20年を安心して暮らすための再設計そのものです。

6-1. 築15年を迎えたあなたが、まず今日やるべきこと

  1. 家の中に水は入っていないか?
    天井や壁紙にシミはないか。窓枠やクローゼットの奥にカビ臭はないか。床がふかふかしていないか。少しでも気になる場所があるなら、そこは優先順位1位です。放置すると桁違いの修繕費になります。
  2. 家のカルテ(保証書・点検記録)は手元にあるか?
    延長保証の可否、点検を受けた履歴、過去の修繕の領収書。それらを1つのファイルにまとめておくだけで、将来の交渉力になります。これは自分の家を守るための最低限の「武器」です。
  3. 壊れたら生活が止まる設備は何か?
    給湯器、トイレ、換気設備、浴室暖房など。これらは延長保証では守られにくい領域です。寿命が近いものから優先的に交換予算を組むか、リフォームの計画に組み込んで“先に手を打つ”ことを検討しましょう。
  4. これから10年、この家でどう暮らしたいか?
    「この家でずっと暮らす」のか。「子どもが独立した後は間取りを変えたい」のか。「ご夫婦のどちらかが在宅ワーク中心になる」のか。「寒い浴室は身体にきついと感じ始めた」のか。暮らし方のイメージがあってこそ、リフォームは“贅沢”ではなく“生活の安全投資”になります。

6-2. 延長保証と大規模改修は、どちらか一方では足りない

延長保証は、建物の骨格と雨漏りのような“致命傷”の領域で頼りになります。だから、保証が続いているなら、その条件や範囲を正確に理解しておく価値は大きいです。一方で、延長保証はあなたの暮らしを劇的に快適にするものではありません。家の寒さ、段差の危険、給湯の不便、トイレのストレスなど、日常の「困った」はほぼ守ってくれません。

逆に、大規模改修は、将来の暮らしを安心で楽にするための“前向きの処方箋”です。ただし、外装・防水まわりの扱いを間違えると、せっかくの改修が延長保証の条件を壊してしまうこともあります。だから本当は、「保証の線引き」と「改修の計画」は同じテーブルで話し合うべきなのです。

つまり、延長保証=家の命綱 / 大規模改修=これからの暮らし方の最適化。両方を理解してバランスを取れば、ムダなく、怖くなく、次の10〜20年を迎えられます。

6-3. 築15年の住宅は、“資産価値”ではなく“生活基盤”そのもの

築15年を超えた家を持つ人の多くは、もう「売って利益を出すための不動産」というより、「家族が安心して暮らし続けるための基盤」として家を見始めています。だからこそ、判断も「この家にお金をかける価値があるか?」ではなく、「この家をこれからの自分たちの体に合わせて安全にしておけるか?」に変わっていきます。

たとえば、浴室の寒さを放置した結果、冬場の入浴時にヒートショックのリスクが高まることがあります。転倒しやすい玄関の段差が、年齢を重ねるほど外出頻度を下げ、閉じこもりがちになることもあります。ドアの開閉が重い・階段手すりがない、といった「ちょっとした不便」は、後の10年では転倒・ケガ・介助の負担に直結します。

つまり、15年以降の家は、「快適」「オシャレ」の前に、「安全に自分らしく暮らせるか」という軸で評価すべき段階に入るのです。そしてその判断は、誰か専門家に任せきりではなく、オーナー自身が“優先順位”を持って進めなければいけません。

6-4. これから20年を見据えた、自分用チェックリスト

  • 雨水の侵入サイン(天井しみ、カビ臭、サッシまわりの黒ずみ)は本当にないか?
  • 床がふかふかする場所はないか?基礎や土台の傷みを疑う部分はないか?
  • 10年・15年時点の点検記録と、修繕の領収書・写真は手元にあるか?
  • 延長保証はどの部位に効いて、どこから先は自己負担か?把握しているか?
  • 給湯器・トイレ・換気設備など、“止まった瞬間に困るもの”の年式と交換準備はできているか?
  • 浴室・脱衣所・トイレ・玄関・階段に、将来の転倒リスクはないか?(手すり・段差・寒暖差)
  • これから10〜20年もこの家で暮らす前提で、まとめて直したい場所はどこか?(外壁・屋根・防水・断熱・水まわりなど)

このチェックリストを“自宅専用カルテ”として1枚にまとめておくだけで、業者と話すときの軸ができます。「うちが本当にやりたいことはこれです」とはっきり伝えられるオーナーは、見積もりでも優位に立てます。

6-5. 最後に:築15年は「終わり」ではなく「次の20年設計のスタート」です

築15年で起きることは老化ではありません。むしろ、これからの暮らし方に合わせて家を設計し直すチャンスです。ここで何となく先送りにすると、20年目以降に「まとめて一気に壊れる」という最悪のタイミングを招きます。逆に、今のうちから優先順位を整理し、保証の範囲と自費の範囲を見極め、必要なところにはしっかり投資する。この姿勢ひとつで、住まいは安心と価値を取り戻します。

住宅は「建てた瞬間がピーク」ではありません。きちんと手を入れれば、15年目からもう一度、家はあなたの暮らしに合わせて成長し直すことができます。それは見た目だけでなく、温度、音、安全性、家事のしやすさ、移動のしやすさ、家族の集まりやすさ、そういった“毎日の質”そのものです。

あなたの家は、これからの10年・20年のあなたの人生そのものです。壊れたところを直す家ではなく、あなたの生き方に合わせて更新されていく家へ。築15年は、そのスタートラインだと考えてください。

築15年セルフチェックシート(戸建て・分譲マンション共通)

築15年セルフチェックシート(戸建て・分譲マンション共通)

このシートは「築15年を超えた住まい」をこれから10〜20年安心して使い続けるための点検用です。
まずはご自宅をご自身で確認し、気になる項目にチェック(✔)とメモを入れてください。
※「はい=気になる/該当する」「いいえ=特に問題なし」という使い方がおすすめです。

築年数 約     年(目安でOK/引渡し●年●月)
建物タイプ □ 戸建て □ 分譲マンション( 号室 / 階)
入居中の家族構成 例)夫婦2人+子1人/高齢の親と同居予定 など
今後10年の住み方 □ この家で住み続ける予定 □ 売却も検討 □ 二世帯・同居予定 □ その他(     )

1. 安全・雨漏り・腐食(最優先で確認したい領域)

1-1 雨水侵入・雨漏り・カビ
チェック項目 はい いいえ 気になる場所・具体的な状況メモ
天井や壁紙に、薄いシミ/黄ばみがある
サッシまわり・クローゼット奥がカビっぽい/湿気っぽい
バルコニー/ベランダ床に細かなひび割れ・剥がれがある
1-2 床下・土台・シロアリ・腐食
チェック項目 はい いいえ 気になる場所・具体的な状況メモ
床が「ふかふか」する・沈む感じがする場所がある
押入れ・洗面台下・床下点検口を開けると、強い湿気やカビ臭がある
白い粉・木くずのようなもの(シロアリ痕跡)を見たことがある

★「はい」が1つでもある場合は、雨水侵入や構造の腐食など、建物の寿命に直結するサインの可能性があります。早めに専門点検を推奨します。

2. 保証・点検記録・工事履歴(後で大きなお金を左右する書類の確認)

チェック項目 はい いいえ メモ(ファイルの場所/連絡先など)
新築時の「保証書」「アフターサービス規約」が手元にある 保管場所:
10年点検(またはそれ以降の定期点検)の報告書・結果メモが残っている 実施年月:
点検後に指摘された補修を、メーカーまたは指定業者で施工した記録がある どこに依頼?:
外壁・屋根・バルコニー防水などを過去に直した場合、領収書や写真が残っている 施工年/業者名:
延長保証(長期保証プラン)に加入している範囲と期限を把握している 期限/対象外:

★「いいえ」が多い場合:いざという時に“保証対象外です”と説明されやすい状況です。書類を1か所にまとめるだけで交渉力が変わります。

3. 設備・水まわり・日常の使い勝手(突然止まると生活が止まるゾーン)

チェック項目 はい いいえ メモ(交換時期・不具合メモ)
給湯器の作動音が大きい/お湯の温度が安定しにくい 型式・年式:
浴室や脱衣所が冬場かなり寒い(ヒートショックが心配) 暖房設備の有無:
トイレや水栓で水漏れがあった/床がふやけた跡がある 場所:
換気扇やレンジフードが「ゴー」「ガラガラ」と異音を出す 気になる部屋:
床鳴り・建具が重いなど、転倒やケガにつながりそうな“日常の小ストレス”がある 場所・内容:

★これらは延長保証の対象外になりやすく、「壊れた瞬間=緊急出費」になりがちです。優先順位とおおよその交換費用をあらかじめメモしておくと安心です。

4. これから20年の暮らし方と、やっておきたい改修

4-1 将来の暮らし方イメージ

□ この家でずっと暮らしたい
□ 二世帯/同居の予定がある
□ 介護や在宅医療が視野にある
□ 子どもや孫が泊まりやすい家にしたい
□ 在宅ワーク・趣味スペースを作りたい

→「はい」の項目があれば、間取り・断熱・バリアフリー・浴室の寒さなど、将来を見据えた改修をまとめて検討するとムダが少なくなります。

4-2 優先して直したい場所(自分メモ)

1位: ___________________________________
2位: ___________________________________
3位: ___________________________________

※おすすめは「命や安全(雨漏り・腐食)→保証の整理→設備の安定→快適性」の順です。

5. まとめメモ(相談したいこと・見積りを取りたい範囲)

・気になる場所(部屋名や場所):

・いつまでに直したい?(急ぎ/今年中/数年以内):

・予算イメージ(ざっくりでOK):

・確認したい保証や書類は?:
このチェックシートはご自宅用のメモです。
※雨漏り/腐食/床の沈み込みなど、安全・構造に関わる項目に「はい」がある場合は、早めの専門点検を強くおすすめします。
※外壁や屋根、防水、窓まわりなどを外部業者へ依頼する前に、現在の保証条件(延長保証など)に影響が出ないか必ず確認してください。

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