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第1章 築15年を迎えた戸建て・分譲マンションオーナーが必ず知っておくべき「見えないコスト」とは?
マイホームを取得してから15年。戸建てでも、分譲マンションでも、多くのオーナー様が「まだ普通に暮らせているし、特に困っていない」と感じている時期です。実際、雨はしのげる。お湯も出る。エアコンも回る。多少のきしみ音はあるけれど、日常生活に大きな支障はない。だからこそ、多くの方が「このまま特に大きなお金はかからないだろう」と安心してしまいます。
しかし、私は住宅業界で40年、お引き渡し直後の点検から築30年以上の大規模リフォーム、そして売却・相続の相談までずっと見てきましたが、築15年というのは実は分岐点です。これを境に、気づかないコストが一気に表面化し、まとまった出費が現実化しやすい時期に入ります。しかもその支出は、壊れてから慌てて対応すると高くつきます。逆に、前もって把握して準備できているオーナーは、驚くほど冷静に、そして安く済ませることができます。
1-1. 築15年は「保証が切れて、劣化が表に出始める」タイミング
日本の住宅には、構造や雨漏りに関する重要な部分について、法律で10年の初期保証(いわゆる「瑕疵担保責任」「瑕疵保険」などと呼ばれる部分)が定められています。引き渡しから10年が経過すると、この最低限の法的な守りが一度区切れます。その後は、ハウスメーカーや建築会社独自の「延長保証」や「アフターサービス」に移行しますが、これは自動的に続くものではなく、条件や手続きが必要なことがほとんどです。
そして引き渡しから15年が経つころには、外壁、防水、給湯、換気、サッシまわりなど、目に見えない部分を中心に「確実に劣化している部位」が現れます。ところが、オーナー様の多くは10年目の点検以降、メーカーや工務店に見てもらっていない場合が多く、劣化が静かに進んでいても“誰も気づいていない”状態になっています。
つまり、築15年とは「保証の切れ目」と「劣化の始まり」が重なる時期なのです。この時期をただ『まだ普通に暮らせるから大丈夫』と通り過ぎてしまうと、築20年目前で一気に費用が噴き出す、という流れになりがちです。
1-2. オーナーが想定していない主な費用項目
築15年を過ぎたあたりから、次のような費用が現実味を帯びてきます。これは戸建てでもマンションの専有部でも共通する内容です。ただし、マンションの場合はこれに加えて「共用部の修繕積立金の増額リスク」がのしかかります。
外壁・屋根・バルコニー防水
サイディング外壁であれば、目地のシーリング(コーキング)が硬化・ひび割れし、結果的に雨水が入りやすくなります。屋根についても、スレート系屋根材の場合は塗膜が紫外線で傷み、吸水しやすくなっていきます。一見すると「色あせただけ」に見えるのですが、実際には防水性能が下がっており、雨水が下地に回り込みやすい状態になっています。バルコニーやベランダ床の防水層も同様で、表面に細かなクラック(ひび)やすり減りが出ている場合、そこから雨水が侵入し、最終的には室内の天井や壁クロスにシミとなって現れます。
この種の修繕は、築10年〜15年の間に一度入れておくのが理想です。ところが実際には「まだ目立つ雨漏りはないから」として放置されてしまい、築18年〜20年頃に初めて大きな雨染みが現れてから緊急工事になることがあります。そうなると、単なる外壁塗装で済んだはずの内容が、内部の下地補修や室内の復旧工事まで含む“雨漏り修繕”になり、一気に費用が跳ね上がります。
給湯器・換気扇・トイレ・水まわり設備
給湯器は10〜15年が交換の目安と言われます。寿命が近づくと「お湯が安定しない」「異音がする」「エラーコードが時々出る」といったサインは出ますが、完全に止まるまでは“なんとなく騙し騙し使えてしまう”のが怖いところです。いざ冬場に壊れると、お湯がまったく出ないという生活に直結したトラブルになり、「即日交換お願いします」と緊急案件化してしまいます。緊急交換は選べる機種も限られ、費用交渉もしづらいのが現実です。
換気扇・レンジフード・浴室暖房乾燥機などの電動機器も、15年を過ぎたころから音が大きくなったり、回転が弱くなったりします。放置すると浴室の湿気が抜けにくくなり、カビや腐朽の原因になります。便器・タンク・水栓金具なども、15年を超えるとパッキン劣化や水漏れが目立ちます。水漏れは床下の腐れやシロアリ呼び込みにも直結するため、軽視は禁物です。
内装(床・建具・クロス)
床がきしむ、ドアが閉まりにくい、引き戸が重い。これらは「家が古くなったからまあそういうものだ」と片付けられがちですが、実際には床下の束や下地が緩んでいたり、建具の反りや金物の摩耗が原因であることが多いです。放置すると開閉のたびにストレスとなるだけでなく、ドア本体や枠を丸ごと交換する事態に発展し、費用が膨らみます。小さな調整の段階で手を打つことが、長期的にはもっとも安く済むコツです。
外構・エクステリア
駐車場の土間コンクリートのひび割れ、門扉やフェンスのがたつき、カーポート屋根の劣化や変色なども15年を超えると顕著です。特にカーポート屋根パネルの固定金具がゆるみ、強風で飛散する事故は実際に起きています。外構は「暮らしに直結していない」と後回しにされやすいのですが、強風・台風のときには安全性の問題にもなるため、早めに点検対象に入れておくべき場所です。
1-3. マンションオーナーに特有の見落とし費用
分譲マンションをお持ちの方は、もうひとつ視界に入れておくべきものがあります。それが「管理組合と修繕積立金」です。築15年を過ぎると、多くのマンションは1回目〜2回目の大規模修繕(外壁・屋上・共用廊下・手すり・防水など)を本格的に検討する時期に入ります。当然、その費用は修繕積立金から捻出されます。
しかし、もともとの積立金が十分でない場合や、想定より劣化が早い場合、管理組合から「積立金の値上げ」あるいは「一時金の徴収」といった話が出てきます。つまり、オーナーであるあなたが、月々の管理費・積立金とは別に、追加で数十万円単位の負担を求められる可能性があるということです。
この話は本当に多くの方が「聞いていなかった」「そんなこと急に言われても困る」と驚かれます。ですが管理組合としては避けることができません。なぜなら、共用部の外壁や屋上防水は “あなた個人の部屋だけ”の問題ではなく、建物全体の寿命、安全性、そして資産価値に直結する部分だからです。ここを後回しにするという選択肢は現実的にはほとんどありません。
1-4. 予算が準備できている人/できていない人で将来がまったく違う
同じ築15年でも、将来がまったく変わります。共通点はシンプルで、「事前にお金の位置づけをしていたかどうか」です。10年目までにほぼノーメンテで、15年を過ぎてもノーチェックで、突然20年目に屋根から雨漏りした場合、そこからの修繕は一気に高額になりがちです。さらに、老朽設備が同時期に複数壊れることもあります。給湯器・浴室暖房・トイレ・サッシの結露対策などが同時に来ると、100万円単位はすぐに到達します。
逆に、「15年というのは“次の10〜20年住み続けるための再点検のタイミング”だ」と理解して準備した人は、支出を“計画投資”として扱えます。計画的な投資は交渉の余地があります。複数工事項目をまとめることで足場や人件費の重複を減らせる、複数の見積もりを比べられる、省エネや断熱改修と組み合わせて補助金の対象にできる、といった具体的な手段が取れるのです。
1-5. なぜ多くのオーナーが「大きな支出が来る」という事実を知らないのか
理由は3つあります。
1つ目は、建物というのは劣化が静かに進むため、「危機感を与えるサイン」が室内に出るころにはすでに手遅れになりがちなこと。例えば雨漏りのシミが天井に現れるというのは末期症状であり、その時点では単なるコーキング打ち替えでは済まないことが多いのです。
2つ目は、保証や定期点検に関する書類が分散管理されていること。引き渡し当時のファイル一式をそのままきれいに保管しているご家庭は意外と少数です。引っ越しや模様替えでどこに行ったかわからない、担当営業が退職してしまった、ハウスメーカー自体が合併・統合して連絡先が変わった、などの理由で「誰に何を聞けばいいのか分からない」状態が起きています。
3つ目は、ネット検索で出てくる情報が断片的であること。『外壁塗装は◯年ごと』『給湯器は◯年で交換』といった単発の情報はあっても、実際には外壁・屋根・バルコニー・給湯・水まわり設備・内装・外構が同時に15〜25年のタイミングで影響してくる、という“全体像の整理された説明”にはなかなか出会えません。その結果、気づいたら「どこから手をつければいいかわからない」という不安だけを抱えてしまうのです。
1-6. 結論:築15年は、次の10年を設計し直すタイミング
築15年は「壊れたら対応」から「壊れる前に手を打つ」へ、考え方を転換する時期です。特に、これからも住み続ける予定の戸建てや、ローンを払い終える前のマンションをお持ちのオーナー様にとって、15〜20年の手当ては住まいを“守るためのコスト”であると同時に、“資産価値を落とさないための投資”です。
次章では、そのときに必ず関わってくる「延長保証」という仕組みのメリットと注意点を、現場目線で解説します。多くの方が『延長保証に入っているから安心』と言います。しかし、その“安心”が本当にあなたの家を守れる安心なのか、正しく理解できているでしょうか?
第2章 「延長保証があるから安心」は本当に安心か? ― 40年現場から見た、保証のリアルと落とし穴
築10年を過ぎた頃から、ハウスメーカーや建築会社から「アフター点検」「長期保証制度」「延長保証プラン」などの案内を受けた方は多いはずです。これらは一見すると心強く、『これでまだまだ安心して住めるんだな』と思わせてくれる言葉が並びます。しかし、私は長年オーナー様からこういう相談も受けてきました。「延長保証に入ってたはずなのに、実際は対象外だった」「保証のはずが有償と言われた」「そもそも保証が切れていた」。なぜこのギャップが生まれるのでしょうか?
2-1. 延長保証とはそもそも何を守る仕組みか
多くのハウスメーカーが用意している延長保証は、主に『構造耐力上主要な部分』と『雨水の侵入を防止する部分』に関するものです。これはつまり、柱・梁・基礎など建物を支える部分や、屋根・外壁など雨漏りにつながる部位が中心です。逆に言えば、内装のキズ、扉のたわみ、床鳴り、換気扇、給湯器、トイレの不具合など、日常生活でよく気になる部分は、延長保証では対象外であるケースが非常に多いのです。
ここで重要なのは、「あなたが困る場所」と「延長保証が守る場所」は必ずしも一致しない、ということです。例えばお湯が出ない=生活は直撃レベルで困る。しかしその給湯器本体は建物の主要構造でもなければ雨漏りでもないので、延長保証の範囲外であることがほとんどなのです。
2-2. 延長保証を受けるための前提条件
延長保証は、10年経過後も自動的に継続されるものではありません。多くの場合、オーナー側に次のような義務や条件が課されています。
- 定期点検を受けること(10年、15年などの節目)
 - その点検で指摘されたメンテナンス工事を、メーカー指定もしくはメーカー承認業者で行うこと
 - 勝手な改築・増築をしていないこと
 - 雨漏りなどの不具合が出た場合、すぐメーカーに報告し、記録を残していること
 
このあたりを「なんとなく把握しているつもりで書面は読んでいない」という方が多く、実はここが最も大きな落とし穴です。例えば、10年目点検の案内がポストに入っていたけれど忙しくてスルーし、15年目に雨染みを見つけて連絡したら『点検を受けていないので長期保証外です』と説明されるようなケースは、珍しくありません。
2-3. “保証が切れる”典型パターン
保証書と点検記録を見直すと、次のようなパターンで延長保証が無効化されていることがあります。
1) 指定業者以外で外壁を塗り替えた
外壁塗装・屋根塗装を「知り合いの塗装屋さん」や「訪問販売系の業者」で行った場合、ハウスメーカー側から見ると“勝手な施工”扱いになり、その後の雨漏りは保証対象外と言われることがあります。オーナーからすれば「ちゃんと塗装したのに、むしろ良かれと思ってやったのに」という気持ちなのですが、メーカー側は『当社の仕様以外の塗料・工法を使ったので責任は持てません』というロジックになるのです。
2) 定期点検を受けていない/報告していない
点検案内の封筒・ハガキ・メールなどを1回見逃しただけで、その後の長期保証が打ち切られることもあります。これを「そんなの聞いてない」というオーナー様は多いのですが、メーカーからすれば『点検記録がない=状態管理ができていない=保証できない』という説明が成り立ってしまうのです。
3) 小規模な雨水侵入を放置した
サッシまわりやバルコニーの排水不良などで、じわじわと雨水が入っていたにも関わらず、オーナー様が「まあ拭けばいいや」と放置してしまう。後になってから『実は長期間にわたる水分侵入が原因で下地が腐食していた』とわかったとき、メーカー側からは『早期連絡がなかったので保証対象外です』と整理されることもあります。つまり、「小さい変化」と思って放っておいたことが、後で“自己責任扱い”になることがあるのです。
4) 災害・地震・台風被害
台風で屋根材が一部はがれた、地震で外壁にクラックが入った。このようなケースでは、延長保証の対象ではなく、火災保険・地震保険での対応を求められることが一般的です。この線引きが曖昧なまま「保証で直してくれると思っていた」と期待してしまい、保険の申請時期を逃すことがあるので注意が必要です。
2-4. 延長保証でカバーされない“生活直撃系トラブル”
ここで強調しておきたいのは、延長保証は住宅全体をまるごと面倒見てくれる「万能安心パック」ではない、ということです。むしろ逆で、日常のストレスや生活の質に直結しやすい部分ほど、延長保証の範囲外になりがちです。
- お湯が出ない(給湯器)
 - お風呂が暖まらない(浴室暖房乾燥機)
 - トイレが水漏れする/止水不良
 - レンジフードから異音、吸い込みが悪い
 - リビングのエアコンが突然停止
 - サッシのすき間風・結露によるカビ
 
このあたりは、ほぼ確実に「自己負担」となります。ここで後手に回ると『壊れたときに都度交換』という形で緊急コストが積み重なります。特に給湯器のようなライフライン設備は、壊れた瞬間から生活の質が直撃で下がるため、値段交渉どころではなくなります。
2-5. オーナーとして今すぐやっておくべきこと
では、築15年の今、オーナーとして何をしておくと良いか。私から見ると、次の5つは優先度が高いです。
1) 保証書と引渡しファイルを探し出す
まずは書類の確認です。「延長保証の条件」「期限」「対象範囲」「指定業者の条件」「点検履歴の扱い」などを、自分の目でチェックしておきましょう。たったこれだけで、いざというときの交渉力がまったく違ってきます。
2) 10年目以降の点検履歴を把握する
10年時点・15年時点などで点検を受けたか?指摘事項はあったか?その補修はメーカー発注でやったか?それとも地元の業者に頼んだか?これらを整理しておくことが、保証継続の可否を左右します。もし点検を受けていないなら、今からでも「現状診断」という形で依頼できる場合もあります。
3) 災害分は火災保険・地震保険でカバーできるか確認する
延長保証に災害は含まれないケースがほとんどです。つまり災害ダメージは保険の世界になります。保険証券の補償範囲・免責・申請期限も必ず確認しておきましょう。特に台風・豪雨の水のまわりは、放置するとカビや構造材の腐朽に直結します。
4) 設備機器は“壊れてから”ではなく“壊れる前に積立”する
給湯器、浴室暖房、換気、トイレ機器など、いわゆる「住宅設備」は延長保証対象外になりがちです。これらは10〜20万円台の修理・交換費用が一気に来るので、毎月少しずつでも専用の積立をしておくのが現実的です。延長保証=住宅のすべてを守ってくれる、ではないと理解したうえで、生活直撃系の設備には自分側の予算準備が必要です。
5) リフォーム・修繕の前に必ず「保証に影響しますか?」と聞く
外壁塗装や屋根補修、バルコニー防水、窓交換、断熱改修などの工事を検討しているなら、発注前に「この工事を外部業者に頼むと、御社の保証は切れますか?」とハウスメーカー側に確認してください。これを聞かずに着工してしまうと、のちのち延長保証が失効してしまうことがあります。ここを聞くのは、オーナーの当然の権利です。
2-6. 延長保証は“神の盾”ではなく、“正しく使えば役に立つ道具”
結論として、延長保証は万能ではありません。しかし、だからといって「意味がない」というわけでもありません。延長保証の本当の価値は、建物の構造と防水に関して、致命傷になる前にメーカー側の目と責任を引き続き入れ続けられるという点にあります。特に、基礎、外壁、屋根、バルコニーまわりの防水や下地腐食は、放置すると修繕額が桁違いになります。延長保証は、その“桁違いゾーン”をカバーする傘になりうるのです。
ただし、その傘の柄(=条件やルール)を自分で握っておかなければ、いざという時に開かない傘になってしまう。これが、築15年以降のオーナーが最も注意すべきポイントだと言えます。次の章では、ここまでの話をいったん踏まえたうえで、「では実際にどこまで直すべきか?」「どこは延命でよいのか?」という判断を、“大規模改修”という選択肢から考えていきます。

第3章 戸建て住宅の「大規模改修」という考え方 ― 15年以降の家をどう延命し、どう価値を守るか
築15年を過ぎると、多くのオーナーが悩むことになります。「外壁は塗り替えるべき?」「給湯器は交換?」「お風呂が寒いのは我慢?」「床のきしみは放置で平気?」そして最後に出てくるのがこれです。『いっそまとめてやったほうが安いのでは?』
これが、いわゆる“戸建ての大規模改修”という考え方です。単発の修繕をバラバラと出たとこ勝負で積み上げるのではなく、屋根・外壁・防水・窓・断熱・水まわり・内装・電気設備といった複数の項目を「まとめて見直す」というアプローチです。このやり方には明確なメリットがあります。それは、家をもう一度“これからの10〜20年に合った仕様”に最適化し直せるということ。そして、結果的にバラバラ工事よりトータルコストを抑えられることです。
3-1. 大規模改修とは何をする工事か
大規模改修とは、単純に言うと「家全体の健康診断と集中治療」を同時にやるイメージです。具体的には次のような工事がセットになります。
- 外壁・屋根の再塗装または張り替え(防水性能と外観の再生)
 - バルコニーやベランダの防水層の再施工(雨漏り予防)
 - サッシ・窓まわりの断熱/気密性改善(結露・冷暖房効率の改善)
 - 給湯器・浴室暖房・キッチン機器等の設備更新(省エネ・故障予防)
 - お風呂・キッチン・トイレなど水まわりの総入替(衛生性・快適性アップ)
 - 床や建具の補修・貼り替え・調整(日常のストレス改善)
 - 手すり設置や段差解消などのバリアフリー改修(将来の暮らし方の準備)
 
バラバラに発生した不満要素(結露・寒い浴室・荒れた外壁・古びたキッチン・床鳴り)を、ひとつずつ「応急処置」ではなく「再設計」でまとめて処理する、というのが大規模改修の考え方です。
3-2. なぜ「まとめて」やると安くなるのか? 足場・人件費・同時施工の合理性
リフォームは、工事そのものの金額だけではなく「段取り」の費用がかかります。たとえば外壁を塗り替える時には、家の周囲に足場を組みます。この足場は数十万円かかることがあります。屋根補修のときも足場。バルコニー防水のときも足場。外壁のシーリング打ち替えのときも足場。つまり、バラバラにやれば足場代は何度もかかります。
逆に、大規模改修としてまとめて行えば、1回の足場で屋根・外壁・バルコニー防水・雨どい交換などを一気に施工できます。足場費・養生費・職人の移動や段取りのコストが一度で済むため、トータルで見ると同じ内容でも30%前後安くなることは珍しくありません。これは築15年〜25年の戸建てで特に効いてきます。なぜなら、まさにその時期に外装・防水系の更新サイクルが重なってくるからです。
3-3. “今の暮らし”ではなく“これからの暮らし”に合わせる
もうひとつのメリットは、機能の方向性を揃えられることです。築15年のときと築30年のときでは、家に求めるものは違います。たとえば次のような変化は自然に起きます。
- 子ども部屋が不要になってきた/逆に子や孫が泊まる部屋が必要になった
 - 浴室や脱衣所が寒いと身体に負担が大きいと感じるようになった
 - 階段の上り下りが少し怖くなってきた
 - ガスコンロの火が不安になり、IHなど安全性の高い機器に関心が出てきた
 - 光熱費が気になるので、高効率給湯器や断熱窓に興味がある
 
これは“贅沢のためのリフォーム”ではありません。これは“これからの10〜20年を安全に暮らすための家のチューニング”です。大規模改修は、この「これからの暮らし方」をベースに家を再編するという意味を持ちます。単純に新築に戻すのではなく、「今の年齢・今の家族構成・今の健康状態」に合わせて、家そのものをアップデートする行為なのです。
3-4. 費用感の目安と、どこまでやるかの線引き
実際の費用感は家の大きさや仕様によって変わりますが、イメージとしては次のようなレンジがよくあります。
| 改修メニュー | 内容例 | 目安費用帯 | 
|---|---|---|
| 外壁・屋根・防水 | 外壁塗装/シーリング打替え/屋根塗膜保護/バルコニー防水再施工 | 150〜250万円 | 
| 水まわり総リニューアル | キッチン・浴室・洗面・トイレの同時刷新、配管確認 | 300〜500万円 | 
| 断熱・窓 | 内窓設置やサッシ交換、床下断熱・天井断熱補強 | 100〜200万円 | 
| 設備・給湯・空調 | 高効率給湯器/浴室暖房換気乾燥機/24時間換気設備更新 | 150〜400万円 | 
| 内装・建具・バリアフリー | 床の貼替え、建具調整交換、手すり設置、段差解消 | 50〜150万円 | 
もちろん、すべてを一度に行えば800〜1,200万円規模になることもあります。ただし、これは「新築し直す」と比べると圧倒的に安い金額で、しかも間取りや周辺環境(学校区・通勤距離・ご近所関係)といった今の生活基盤をそのまま残すことができます。言い換えると、大規模改修とは「建て替えほどの費用はかけずに、いまの家を次の20年仕様にする」という考え方です。
3-5. 補助金・減税・住宅ローンとの関係
大規模改修には、場合によっては国や自治体の補助金・助成金・優遇制度が活用できます。たとえば、断熱窓・高効率給湯器・バリアフリー化・耐震補強などは、年度ごとに支援策が変わります。また、リフォームローンや住宅ローンの借り換えによって、低金利で資金を組み直せるケースもあります。これは“現金一括払いで我慢するかどうか”という発想から、“長期的な住まい方に合わせて資金計画を設計する”という発想に切り替えるチャンスでもあります。
特に、築15年〜20年というのは、まだ家族の生活が続いている世代でもあり、同時にご自身の将来の健康・介護・働き方の変化も見えてくる世代です。この時点で、断熱性・段差解消・浴室の安全性・トイレの動線などを一気に整えておくと、後の10年間で感じるストレスが大きく減ります。これは医療や介護の観点から見ても非常に重要です。転倒リスクの少ない床、冬でも冷えすぎない浴室などは、日常生活の安心感を著しく高めます。
3-6. 「延長保証」と「大規模改修」は競合ではなく役割が違う
延長保証は、主に家の“骨格”と“雨水の侵入”という致命傷になりやすい部分を守る仕組みです。一方、大規模改修は、あなたの暮らしの現在と未来に合わせて家自体をチューニングし直す取り組みです。どちらかを選べばもう片方はいらない、というものではありません。むしろ、両方を正しく理解して使い分けることで、住まい全体のリスクとコストをバランスよく抑えることができます。
延長保証は「壊れた時に一定条件下でメーカーが責任を取ってくれる」後ろ盾。一方、大規模改修は「壊れる前に、そもそも弱点を作り直す」 forward型メンテナンス。延長保証だけに頼っていると、生活に直結する設備や寒さ・結露・段差といった“暮らしの質”は取りこぼされます。逆に、リフォームだけを積み上げて延長保証をまったく意識しないと、構造や防水に関する致命傷リスクへの備えが薄くなります。
3-7. 結論:築15年の意思決定は「これからの10年をどう生きたいか」の宣言になる
築15年というのは、単に家が古びてくる時期ではありません。あなたの家族構成や健康状態、働き方、将来の暮らし方が見え始める節目です。だから本来、築15年以降の改修は“修理”ではなく“これからの暮らしを設計する行為”であるべきです。
まだまだこの家に住み続けたい。子や孫が帰省してくる場所として保ちたい。将来、自分や配偶者の体力が落ちても安全に暮らしたい。そういった想いがあるなら、大規模改修・延長保証・設備更新のどれをどの順番でやるべきかを、今の段階から地に足のついた形で整理しておくことが肝心です。
次の章では、実際に「何から手をつければいいのか?」という順番とチェックリストを提示します。大きなお金の話になってくるからこそ、正しい順番で考えるとムダが減ります。逆に順番を間違えると、保証が切れたり、同じ場所に2回足場をかけたりと、コストが積み上がってしまいます。
第4章 まず何から手をつける? ― 築15年オーナーのための優先順位チェックリスト
築15年を過ぎると、「あれも直したい」「ここも気になる」「保証も気になる」と、一度に色んな不安が頭に浮かびます。結果として、何も動けなくなるオーナー様も少なくありません。ここでは、40年住宅に関わってきた立場から、実際の現場で“これを順番にやった人はうまくいった”という優先順位をはっきりと提示します。
この優先順位は、(1)命や安全に関わるもの → (2)建物の寿命に関わるもの → (3)生活のしやすさ → (4)見た目や快適性 という順で考えています。この順番で整理すれば、費用のかけ方も含めて判断がしやすくなります。
4-1. 最優先は「安全」と「雨水の侵入」
まず確認してほしいのは、次の2つだけです。これは最優先で、お金をケチるべきではありません。
- 雨が入っていないか?(雨漏り・滲み・結露由来のカビ)
天井や壁紙にうっすらとしたシミ、サッシまわりやバルコニーの下部に黒ずみ、クローゼットの奥のカビ臭。このようなサインは「もう室内に症状が出ている」段階です。単純な塗り替えではなく、下地・防水層に踏み込んで直す必要があることが多いため、早期にプロ点検が必要です。 - 腐食・シロアリ・床下の湿気はないか?
床がふかふかする、押し入れや洗面所下の床が柔らかい、床下点検口(キッチンや洗面所の収納の底にある場合が多い)を開けたときに強い湿気・カビ臭がある。この状態を放置すると、土台・柱・合板などの構造部分に影響し、補修費が急激に高くなります。安全性の問題にも直結します。 
住宅のメンテナンスを検討する際、「外観が古びてきたから外壁塗装かな」と考える方が多いのですが、実際の優先順位は逆です。まず内部に水が入っていないか、安全性が脅かされていないかを優先してください。外観の色あせは後回しでも、命と躯体は後回しにできません。
4-2. 次は「保証と書類」の確認
建物の状態が急を要するほど深刻でなければ、次のステップは「紙の確認」です。これはお金をかけずに今すぐできるのに、放置されがちな部分です。
ステップ1:保証書・取扱説明書ファイルを探す
新築引渡し時にもらったバインダー、工務店からもらったファイル、もしくはキッチン・給湯器・トイレなど設備ごとの保証書。ここに「保証期間」「点検条件」「指定業者に依頼してください」などの文言があります。
特に重要なのは、「延長保証」と書かれた資料があるかどうかと、「その延長保証に入っているか?入る予定があったか?」です。延長保証は自動継続ではないことが多いため、未加入のまま10年を過ぎると、15年目の時点で「あれ?もう対象外なんですか?」というズレが発生します。
ステップ2:点検履歴・修繕履歴をメモにまとめる
・10年目にメーカーやハウスメーカーの点検を受けたか?
     ・そのとき指摘はあったか?
     ・指摘箇所を直したのは誰か?(メーカー/地元業者/DIY)
     ・見積書・領収書は残っているか?
これらは将来的に「保証を継続できますか?」「この雨漏りは保証対象ですか?」という交渉の土台になります。住宅の世界では、「記録があるお客様」は強いです。逆に、記録がないと「申し訳ないのですが保証対象外で…」と言われる確率が上がります。
4-3. その次に「設備」と「日常ストレス」をチェック
ここまで来てようやく、給湯器やトイレ、換気設備、床鳴りといった“生活に直結する部分”を整理していきます。これは延長保証ではカバーされにくい部分なので、基本的には自己防衛になります。
- お湯が突然止まったら困る? → 給湯器の年式と状況を確認し、交換費用の目安を知っておく。
 - 冬の浴室が寒い? → 浴室暖房・断熱のリフォームや、ヒートショック対策の必要性を検討。
 - トイレの水漏れ・止水不良はない? → 床材がふやけていたら床下まで要確認。
 - 床鳴り・ドアの開閉不良は? → 我慢すればいい問題ではなく、転倒・ケガ・ストレスの要因になる。
 
これらは「壊れそうな部分の予算を積み始める」領域です。突然の故障=突然の10万〜30万円、というのは家計へのダメージが大きいので、あらかじめ“生活系のものは延長保証では守られない”と理解したうえで積立しておくのが現実的です。
4-4. 最後に「見た目」「快適性」「暮らし方の改善」
ここでようやく、外観をどう整えるか、内装をどうアップデートするか、収納をどう増やすか、というテーマに入ります。たとえば次のような内容です。
- 外壁を塗り直して家としての印象を回復したい
 - キッチンを最新型に変えて家事効率を上げたい
 - リビングの仕切りを取り払い、広い空間にしたい
 - 書斎スペースや在宅ワーク用の小部屋をつくりたい
 
これらは「生活の質」「暮らし方の満足度」に直結します。ここまで優先順位を下げてきたのは、お金をかける順番を間違えないためです。安心・安全・寿命の確保を先にやることで、その後の“快適リフォーム”は落ち着いた判断のもとで進められますし、予算配分も現実的になります。
4-5. まとめ:順番を間違えると、お金は倍速で消える
いちばん避けたいのは「キッチンを新しくした直後に、雨漏りが見つかって壁を壊すことになった」というパターンです。せっかくの新品設備の周囲を再解体することになり、手戻りのコストがかさみ、精神的なダメージも大きい。だからこそ、(1)命と防水、(2)保証と記録、(3)設備と日常、(4)快適性・見た目。この順番を守ると、ムダな二度手間を避けつつ、家の価値と暮らしの満足度を一緒に守ることができます。
次章では、この優先順位を守った人と守らなかった人とで、将来どのくらい差が出るのか、実際のパターンを紹介します。良い例も、悪い例も、どちらも本当にあった内容を元にしています。自分の家はどちら寄りか、ぜひ照らし合わせてみてください。

第5章 現場で本当にあった「もったいない失敗」と「賢い成功」
長く家を見ていると、オーナー様の判断ひとつで、10年後の暮らしがまったく違ってしまうことを痛感します。ここでは、実際の現場でよくあるパターンを、やや一般化したかたちでご紹介します。どれも“特別な話”ではなく、築15年以降の家では誰にでも起こりえることです。
5-1. 失敗例その1:「外壁塗装は安い業者で済ませたのに、結果的に高くついた」
築16年の戸建て。外壁の色あせが気になり、訪問販売の塗装業者から「今なら安くできますよ」と声をかけられたオーナーが、メーカーや建築会社に連絡せずそのまま契約しました。見積は確かに安かった。仕上がりもぱっと見はきれいでした。
ところが2年後、雨の日に窓枠からじわっと染みが出て、壁紙にうっすらシミが残るようになりました。ハウスメーカーに相談したところ、「当社指定の材料・工法ではないため、延長保証は適用できません」と説明されました。結果として、外壁の一部をはがし、内部の下地や防水層を修繕し、室内のクロスや断熱材まで復旧する工事が必要になりました。費用は、もともと払った外壁塗装の金額をはるかに上回りました。
オーナーの感覚としては「ちゃんと塗ったのに、なぜ?」です。しかしメーカー側の考え方は「元の仕様と違う施工をされた以上、その後の雨水侵入は当社では保証しきれない」というもの。このズレが、お金に直結します。“安く塗れた”と思った判断が、延長保証を失い、結果的に何倍もの修繕費を呼び込むという、非常によくある失敗パターンです。
5-2. 失敗例その2:「給湯器が止まってから慌てて交換。選べない・高い・待つ」
築18年の戸建て。冬の夜、お湯が出なくなりました。家族は当然大混乱です。オーナーは急いで業者に連絡し、「とにかく明日にはお湯が出るようにしてください」と依頼しました。結果、高効率タイプではない在庫品を、ほぼ定価に近い価格で即日交換することに。
落ち着いて考えれば、省エネタイプに切り替えるチャンスでもあり、補助金を活用できる可能性もあったはずです。しかし、生活インフラが止まった状態ではそんな交渉はできません。「選ぶ」余地がほぼゼロになってしまうのです。これはとにかく多いケースで、事前に「うちの給湯器は何年選手か?」「交換するとしたらいくらくらいか?」を把握していれば、防げた出費でした。
5-3. 失敗例その3:「点検記録がなくて、保証の話が進まない」
築15年を過ぎたあたりで、天井にシミが出始めたオーナー。過去の10年点検の報告書も、補修の領収書も手元に残していませんでした。ハウスメーカー側に相談すると、「点検履歴が確認できず、お客様のほうで外壁メンテナンスをされたのか、またその工事内容がどういうものだったのかも把握できません。どこの時点からの雨水か断定できないので、無償では難しいです」という回答。
オーナー様としては「そんな言い方をされると思わなかった」という気持ちになるのですが、メーカーの立場から見ると“いつからの不具合なのか、誰の工事の影響なのか”を切り分けられないものは保証できない、という理屈になります。これも、書類・記録の管理だけで避けられたはずの残念なケースです。
5-4. 成功例その1:「15年で“まとめて見直し”を決断し、以後の20年分まで整えた」
築17年の木造2階建て。オーナー夫婦は、これからの20年を見据えて「もう建て替えるつもりはない、この家で最後まで暮らしたい」とはっきり意思表示されました。そこで、外壁・屋根・ベランダ防水・雨どいの更新、サッシと断熱の一部強化、給湯器と浴室暖房の交換、浴室と洗面所のバリアフリー化を1回の改修工事としてまとめて実施しました。
工事金額はそれなりにかかりましたが、足場は一度で済み、複数の工事が同時進行できたため、合計コストは個別対応の総額よりも安く抑えられました。さらに、ヒートショック対策として浴室や脱衣所の寒さを抑える改修を入れた結果、「冬のお風呂が怖くなくなった」と奥様がはっきりおっしゃったのが印象的でした。これは金額では計れない価値です。
このご家庭は「延長保証はどこまで効くか」「どこからは自費になるか」「将来困るところは何か」を夫婦で紙に書き出し、優先順位を決めてから工事範囲を決めました。つまり、“なんとなく直す”ではなく、“これからどう暮らしたいかを決めてから家を合わせた”のです。
5-5. 成功例その2:「点検と記録をとにかく残した」
あるオーナーは、10年目点検の結果報告書、メーカーからの指摘事項、行った修繕の領収書や完了写真をすべてクリアファイルに入れて保管していました。15年以降にバルコニー床からの漏水が疑われたとき、ハウスメーカーとのやり取りがスムーズで、「この時点では問題なし」「この時期以降に劣化が進んだ可能性が高い」という話がすぐ共有され、保証の一部を適用してもらえました。
これは特別なことではありません。ただ、“家のカルテ”を持っているかどうかで、数十万円単位の自己負担が変わった、というだけの話です。家は一生モノと言われますが、家を守るのは“記録”という、とても現実的な道具なのです。
5-6. 成功例その3:「リフォーム前に『保証に影響しますか?』と必ず聞いた」
もうひとつ、シンプルだけど効果が大きい行動があります。それは、外壁・屋根・窓・防水などの工事を依頼する前に、必ず「この工事を御社以外でやったら保証は切れますか?」と確認することです。これは聞くだけでいいのです。これを聞かずに勝手にやってしまうと、後から「その工事は当社仕様外」として保証が効かなくなる場合があります。
今までの経験上、「ちゃんと確認するお客様」はメーカー側からも“きちんと住まいを管理したい方”だと認識され、対応がスムーズなことが多い。逆に、黙って外部業者に頼んでから事後報告だと、「それは当社の施工ではないので…」というスタートラインに立たされ、無償対応の可能性が一気に下がることがあります。
5-7. まとめ:あなたの家は、どちら寄りだったか?
この章で紹介した失敗例は、特別なレアケースではありません。むしろ、築15年を超える持ち家では本当によくある話です。そして成功例もまた、特別なセンスや専門知識がなくても実現できます。保証内容を読み返す。点検結果と領収書をファイルする。工事前にひとこと確認する。これだけで、住まいの将来コストは目に見えて変わります。
次の最終章では、ここまでの内容を「これから10年、20年住み続けるための宣言」としてまとめます。どこまで延長保証に頼るか。どこからは自分の計画投資と割り切るか。そして、“いまの家”を“これからの暮らし方に合った家”に変えていく具体的な考え方を、最終的な指針として整理します。
第6章 築15年は「壊れたら直す家」から「守りながら住み続ける家」への転換点
ここまで、築15年を過ぎた住宅オーナーが直面しやすい現実をお伝えしてきました。保証が切れ始める時期と、劣化や不具合が目立ち始める時期が重なる。延長保証は“何でも守ってくれる魔法の保険”ではなく、あくまで構造・防水などの致命傷ゾーンを守るための仕組み。給湯器やトイレといった生活直撃の設備は、むしろ自己防衛が必要。そして、外壁・屋根・水まわり・断熱・バリアフリーなどをまとめて見直す「大規模改修」という考え方は、単なる贅沢ではなく、これからの10年〜20年を安心して暮らすための再設計そのものです。
6-1. 築15年を迎えたあなたが、まず今日やるべきこと
- 家の中に水は入っていないか?
天井や壁紙にシミはないか。窓枠やクローゼットの奥にカビ臭はないか。床がふかふかしていないか。少しでも気になる場所があるなら、そこは優先順位1位です。放置すると桁違いの修繕費になります。 - 家のカルテ(保証書・点検記録)は手元にあるか?
延長保証の可否、点検を受けた履歴、過去の修繕の領収書。それらを1つのファイルにまとめておくだけで、将来の交渉力になります。これは自分の家を守るための最低限の「武器」です。 - 壊れたら生活が止まる設備は何か?
給湯器、トイレ、換気設備、浴室暖房など。これらは延長保証では守られにくい領域です。寿命が近いものから優先的に交換予算を組むか、リフォームの計画に組み込んで“先に手を打つ”ことを検討しましょう。 - これから10年、この家でどう暮らしたいか?
「この家でずっと暮らす」のか。「子どもが独立した後は間取りを変えたい」のか。「ご夫婦のどちらかが在宅ワーク中心になる」のか。「寒い浴室は身体にきついと感じ始めた」のか。暮らし方のイメージがあってこそ、リフォームは“贅沢”ではなく“生活の安全投資”になります。 
6-2. 延長保証と大規模改修は、どちらか一方では足りない
延長保証は、建物の骨格と雨漏りのような“致命傷”の領域で頼りになります。だから、保証が続いているなら、その条件や範囲を正確に理解しておく価値は大きいです。一方で、延長保証はあなたの暮らしを劇的に快適にするものではありません。家の寒さ、段差の危険、給湯の不便、トイレのストレスなど、日常の「困った」はほぼ守ってくれません。
逆に、大規模改修は、将来の暮らしを安心で楽にするための“前向きの処方箋”です。ただし、外装・防水まわりの扱いを間違えると、せっかくの改修が延長保証の条件を壊してしまうこともあります。だから本当は、「保証の線引き」と「改修の計画」は同じテーブルで話し合うべきなのです。
つまり、延長保証=家の命綱 / 大規模改修=これからの暮らし方の最適化。両方を理解してバランスを取れば、ムダなく、怖くなく、次の10〜20年を迎えられます。
6-3. 築15年の住宅は、“資産価値”ではなく“生活基盤”そのもの
築15年を超えた家を持つ人の多くは、もう「売って利益を出すための不動産」というより、「家族が安心して暮らし続けるための基盤」として家を見始めています。だからこそ、判断も「この家にお金をかける価値があるか?」ではなく、「この家をこれからの自分たちの体に合わせて安全にしておけるか?」に変わっていきます。
たとえば、浴室の寒さを放置した結果、冬場の入浴時にヒートショックのリスクが高まることがあります。転倒しやすい玄関の段差が、年齢を重ねるほど外出頻度を下げ、閉じこもりがちになることもあります。ドアの開閉が重い・階段手すりがない、といった「ちょっとした不便」は、後の10年では転倒・ケガ・介助の負担に直結します。
つまり、15年以降の家は、「快適」「オシャレ」の前に、「安全に自分らしく暮らせるか」という軸で評価すべき段階に入るのです。そしてその判断は、誰か専門家に任せきりではなく、オーナー自身が“優先順位”を持って進めなければいけません。
6-4. これから20年を見据えた、自分用チェックリスト
- 雨水の侵入サイン(天井しみ、カビ臭、サッシまわりの黒ずみ)は本当にないか?
 - 床がふかふかする場所はないか?基礎や土台の傷みを疑う部分はないか?
 - 10年・15年時点の点検記録と、修繕の領収書・写真は手元にあるか?
 - 延長保証はどの部位に効いて、どこから先は自己負担か?把握しているか?
 - 給湯器・トイレ・換気設備など、“止まった瞬間に困るもの”の年式と交換準備はできているか?
 - 浴室・脱衣所・トイレ・玄関・階段に、将来の転倒リスクはないか?(手すり・段差・寒暖差)
 - これから10〜20年もこの家で暮らす前提で、まとめて直したい場所はどこか?(外壁・屋根・防水・断熱・水まわりなど)
 
このチェックリストを“自宅専用カルテ”として1枚にまとめておくだけで、業者と話すときの軸ができます。「うちが本当にやりたいことはこれです」とはっきり伝えられるオーナーは、見積もりでも優位に立てます。
6-5. 最後に:築15年は「終わり」ではなく「次の20年設計のスタート」です
築15年で起きることは老化ではありません。むしろ、これからの暮らし方に合わせて家を設計し直すチャンスです。ここで何となく先送りにすると、20年目以降に「まとめて一気に壊れる」という最悪のタイミングを招きます。逆に、今のうちから優先順位を整理し、保証の範囲と自費の範囲を見極め、必要なところにはしっかり投資する。この姿勢ひとつで、住まいは安心と価値を取り戻します。
住宅は「建てた瞬間がピーク」ではありません。きちんと手を入れれば、15年目からもう一度、家はあなたの暮らしに合わせて成長し直すことができます。それは見た目だけでなく、温度、音、安全性、家事のしやすさ、移動のしやすさ、家族の集まりやすさ、そういった“毎日の質”そのものです。
あなたの家は、これからの10年・20年のあなたの人生そのものです。壊れたところを直す家ではなく、あなたの生き方に合わせて更新されていく家へ。築15年は、そのスタートラインだと考えてください。
築15年セルフチェックシート(戸建て・分譲マンション共通)
    このシートは「築15年を超えた住まい」をこれから10〜20年安心して使い続けるための点検用です。
    まずはご自宅をご自身で確認し、気になる項目にチェック(✔)とメモを入れてください。
    ※「はい=気になる/該当する」「いいえ=特に問題なし」という使い方がおすすめです。
  
| 築年数 | 約 年(目安でOK/引渡し●年●月) | 
|---|---|
| 建物タイプ | □ 戸建て □ 分譲マンション( 号室 / 階) | 
| 入居中の家族構成 | 例)夫婦2人+子1人/高齢の親と同居予定 など | 
| 今後10年の住み方 | □ この家で住み続ける予定 □ 売却も検討 □ 二世帯・同居予定 □ その他( ) | 
1. 安全・雨漏り・腐食(最優先で確認したい領域)
| 1-1 雨水侵入・雨漏り・カビ | |||
|---|---|---|---|
| チェック項目 | はい | いいえ | 気になる場所・具体的な状況メモ | 
| 天井や壁紙に、薄いシミ/黄ばみがある | □ | □ | |
| サッシまわり・クローゼット奥がカビっぽい/湿気っぽい | □ | □ | |
| バルコニー/ベランダ床に細かなひび割れ・剥がれがある | □ | □ | |
| 1-2 床下・土台・シロアリ・腐食 | |||
| チェック項目 | はい | いいえ | 気になる場所・具体的な状況メモ | 
| 床が「ふかふか」する・沈む感じがする場所がある | □ | □ | |
| 押入れ・洗面台下・床下点検口を開けると、強い湿気やカビ臭がある | □ | □ | |
| 白い粉・木くずのようなもの(シロアリ痕跡)を見たことがある | □ | □ | |
★「はい」が1つでもある場合は、雨水侵入や構造の腐食など、建物の寿命に直結するサインの可能性があります。早めに専門点検を推奨します。
2. 保証・点検記録・工事履歴(後で大きなお金を左右する書類の確認)
| チェック項目 | はい | いいえ | メモ(ファイルの場所/連絡先など) | 
|---|---|---|---|
| 新築時の「保証書」「アフターサービス規約」が手元にある | □ | □ | 保管場所: | 
| 10年点検(またはそれ以降の定期点検)の報告書・結果メモが残っている | □ | □ | 実施年月: | 
| 点検後に指摘された補修を、メーカーまたは指定業者で施工した記録がある | □ | □ | どこに依頼?: | 
| 外壁・屋根・バルコニー防水などを過去に直した場合、領収書や写真が残っている | □ | □ | 施工年/業者名: | 
| 延長保証(長期保証プラン)に加入している範囲と期限を把握している | □ | □ | 期限/対象外: | 
★「いいえ」が多い場合:いざという時に“保証対象外です”と説明されやすい状況です。書類を1か所にまとめるだけで交渉力が変わります。
3. 設備・水まわり・日常の使い勝手(突然止まると生活が止まるゾーン)
| チェック項目 | はい | いいえ | メモ(交換時期・不具合メモ) | 
|---|---|---|---|
| 給湯器の作動音が大きい/お湯の温度が安定しにくい | □ | □ | 型式・年式: | 
| 浴室や脱衣所が冬場かなり寒い(ヒートショックが心配) | □ | □ | 暖房設備の有無: | 
| トイレや水栓で水漏れがあった/床がふやけた跡がある | □ | □ | 場所: | 
| 換気扇やレンジフードが「ゴー」「ガラガラ」と異音を出す | □ | □ | 気になる部屋: | 
| 床鳴り・建具が重いなど、転倒やケガにつながりそうな“日常の小ストレス”がある | □ | □ | 場所・内容: | 
★これらは延長保証の対象外になりやすく、「壊れた瞬間=緊急出費」になりがちです。優先順位とおおよその交換費用をあらかじめメモしておくと安心です。
4. これから20年の暮らし方と、やっておきたい改修
4-1 将来の暮らし方イメージ
□ この家でずっと暮らしたい
         □ 二世帯/同居の予定がある
         □ 介護や在宅医療が視野にある
         □ 子どもや孫が泊まりやすい家にしたい
         □ 在宅ワーク・趣味スペースを作りたい
→「はい」の項目があれば、間取り・断熱・バリアフリー・浴室の寒さなど、将来を見据えた改修をまとめて検討するとムダが少なくなります。
4-2 優先して直したい場所(自分メモ)
1位: ___________________________________
         2位: ___________________________________
         3位: ___________________________________
※おすすめは「命や安全(雨漏り・腐食)→保証の整理→設備の安定→快適性」の順です。
5. まとめメモ(相談したいこと・見積りを取りたい範囲)
| 
        ・気になる場所(部屋名や場所): ・いつまでに直したい?(急ぎ/今年中/数年以内): ・予算イメージ(ざっくりでOK): ・確認したい保証や書類は?:  | 
    
※雨漏り/腐食/床の沈み込みなど、安全・構造に関わる項目に「はい」がある場合は、早めの専門点検を強くおすすめします。
※外壁や屋根、防水、窓まわりなどを外部業者へ依頼する前に、現在の保証条件(延長保証など)に影響が出ないか必ず確認してください。

▶ 加藤工業株式会社 本社
- 住所:〒485-0029 愛知県小牧市中央1丁目77番地
 - 電話番号:0568-77-3211(代表)
 - FAX:0568-77-0924
 - 営業時間:8:30~17:30
 - 定休日:日曜・祝日・年末年始・お盆
 - 駐車場:あり
 - ホームページ受付:年中無休・24時間受付
 - 公式サイト:https://kato-kougyou.jp/
 
▶ ライフエナジー館(ショールーム)
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 - 電話番号:0568-76-8500
 - FAX:0568-76-8501
 - 営業時間:9:00~17:00
 - 定休日:水曜日(祝日は営業)・年末年始・お盆
 - 駐車場:あり
 - ホームページ受付:年中無休・24時間受付
 - 公式サイト:https://life-energy.jp
 
▶ わが家のマイスター 小牧店(TOILET BOUTIQUE)
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 - 営業時間:9:00~17:00(※17:00~18:00は電話対応)
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 - ホームページ受付:年中無休・24時間受付
 - 公式サイト:https://toilet-boutique.com
 
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